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Kosuke Sugimoto Talks ④ "Outsider"

杉本晃佑対談④「アウトサイダー」

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新進気鋭の映像クリエイターとして、多数のミュージックビオの、CM映像のディレクションを行っている映像作家、杉本晃佑さんとの対談です。

〈前回までは〉
①「音と映像が合った瞬間とか、生理的にゾクっと…」
②「漫画って、読むのは楽しいけど、描くのはそう楽しくなかったんで……」
③「音と映像が絡む瞬間」。


第4回は「チェコ」。

「ヤン・シュヴァンクマイエルなどの伝統的なチェコアニメを学びに行ったわけではないんですけど。」

平野:杉本さんの世界が次第に広がり、関係者のあいだで名前も知られてきた。とうぜん仕事が一気に増えますよね?

杉本:名前自体は依然として無名なままでしたが、お仕事の縁はありがたいことに多少広がりまして、それでちょっと忙しくなり過ぎてしまって。ほんとうに一年中仕事しかしないような状態になってしまったんです。

平野:いくつくらいのことですか?

杉本: 30歳になったときですね。それで休暇も兼ねて新しいことを勉強したいなと思いまして。英語でもしゃべれたら楽しいかなと思い、海外に英語の勉強で行きました。



Barbora Poláková “Krosna” MV 日本語字幕 from Kosuke Sugimoto on Vimeo.

平野:どこに行かれたんです?

杉本:英語自体はイギリスで勉強していたんですが、そのあといろんな縁が重なってチェコのプラハに辿り着きました。もっとも、ヤン・シュヴァンクマイエルなどの伝統的なチェコアニメを学びに行ったわけではないんですけど。

平野:チェコはいいもんなあ…。何年くらい行かれてたんですか?

杉本:3年半です。

平野:そのあいだ、どんな仕事を?

杉本: CGのディレクターをやっていました。チェコ国内だけでなく、EU のいろんな仕事をやっているスタジオと仲良くなって。そこでディレクターを募集していたので、じゃあ契約をしましょうという話になったんです。

平野:チェコって、ぼくみたいにメディア空間をつくっている人間にはリスペクトがあるんですよね。

杉本:あ、そうなんですか?

平野:とくに映像の分野で。ぼくは小学校6年のときに大阪万博を見たんですけど、宇宙船やロボットなどとともにビックリしたのが「ラテナマジカ」だったんです。

杉本:ラテナマジカ?

平野:そう。チェコが生んだ独創的な芸術で、映像と生身の人間のパフォーマンスが絡むんですよ。一言でいえば、映画のなかの登場人物が、いつの間にかステージ上にライブで現れる。驚いているうちに、また映像のなかにスーっと戻っていく。

杉本:なるほど。

平野:スクリーンに切れ目が入っていたり、ズレていたりしていて、そこから人が出入りするんですよ。たとえば、ローラースケートをやっている人が映っているとすると、その役者がとつぜんスクリーンからステージに飛び出してくる。もちろん映像の動きと連動して、です。生身の人間の出入りが映像と完璧にシンクロしていて、じつにみごとなんです。それがラテナマジカ。

杉本:あ! わかります! そういう演出は見たことあります。でも、それをラテナマジカと呼ぶとは知りませんでした。

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平野:その手法はチェコが生み出したもので、大阪万博にラテナマジカを見るための専用劇場が出来た。それを見てぼくはぶっ飛んだわけです。

杉本:いいですね。

平野:映っている女優とステージに出てくる女優が一緒ですからね。いや、もしかしたら似ているだけで別人なのかもしれないけど、こどもから見たら区別つきませんからね、外国人だし。

杉本:そうですよね。

平野:いわばリアルとバーチャルがぐちゃぐちゃになるわけです。強烈な思い出が残っていたので、数年前にプラハに行ったときに国立のラテナマジカ劇場を訪れたんです。

杉本:専用の国立劇場があるんですね。いまも人気なんですか?

平野:残念ながら、客はあまりいませんでした。でもチェコはいまでもラテナマジカを大事な文化として守っているんです。

杉本:素晴らしいことですね。

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平野:「マルチイメージ」と呼ばれていた複数のスライドを組み合わせた映写システムもチェコの発明です。じっさいぼくは20年前のリスボン万博日本館で、100台のスライドプロジェクターを使った最大級のマルチイメージ映像をつくったことがあります。当時はいまとちがってビデオプロジェクターがケタ違いに高かったし、暗かったから、大画面を映像で埋めるにはスライドのマルチしかやりようがなかったんですよね。

杉本:そうだったんですね。

平野:日本館をつくりに海外の万博に行くと、日本と人気を競ってきたライバルがいるんですよ、カナダ館とかスイス館とかね。いいパビリオンをつくる常連たちです。チェコはそういう国ほど予算はないけれど、小粒ながらいいんですよね。

杉本:なるほど。

平野:チェコ館は美しいわけ。小さいけれど芸術的で、ぼくはリスペクトしてるんです。

杉本:なんか、うれしいな。

平野:ある意味、チェコは映像の先進国です。てっきりそれでチェコを選んだんだろうと思ったんだけど…

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杉本:現在のヨーロッパ事情でいうと、広告の世界ではロンドンが最大手で、CG を使った CM もたくさんつくっているんですが、イギリスの人件費高騰もあって、最近ではチェコやポーランドのスタジオがロンドンから発注を受けて制作するっていう形が増えているんです。

平野:チェコがロンドンの下請けを?

杉本:クリエイティブまで含めて任されています。そういう意味でチェコのCGは頑張ってますよ。



次回は「杉本さんのタッチ」。

⑤「毎回仕事のたびに新しいタッチに挑戦したいと思っているんですね。」

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杉本晃佑(すぎもと こうすけ)

映像作家

1983年生まれ。アニメーション・実写・3DCG・モーショングラフィックスなどを用いた映像と音楽とを緻密に融合させた構成、歌詞や広告商品などを独自に掘り下げたストーリー構築を得意とし、MV、CM制作を主として活動。近年はSEKAI NO OWARIやSCANDALのMV、NHKみんなのうたなどを手がける。また「the TV show」「これくらいで歌う」などの個人作品は国内外の多数の映画祭・コンぺティションで受賞。
2014年からプラハを拠点にヨーロッパでの活動も開始。映像監督を務めた3D映像コンサート「Vivaldianno 2015」はイギリス・ドイツ・チェコなど15ヶ国以上で上演、クラシックコンサートとしては異例の20万人以上の動員となる。2018年、東京に株式会社Studio12を設立。

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