――そして今回、ここには岡本太郎の《眠る兵士》も展示されています。
弓指:戦争に行った太郎さんが自発的に描いた絵で、残っているのはこの一点だけなんです。これはとてもいいドローイングだと思って。
太郎さんが終戦間際にスケッチしたものなんですけど、当時、戦争に負けているからこういう絵は持ち帰れなかったらしいでんですね。でもこれをもらった人が隠し持ってきて・・・それでこれが岡本太郎さんのものだってわかって記念館を開設していた敏子さんのところに寄贈されたんです。
そこで今回、戦争をテーマにやることにしたときに、どうしてもこの絵を一緒に置きたいと思って。平野館長に相談したんです。もし断られたら困るので、ものすごくたくさん資料も用意して・・・お願いします!って。そうしたら「うん、いいよ」ってとても軽いノリでOKで・・・(笑)
――(笑)でも、これがあるのとないのでこの展示はぜんぜん違いますね。
弓指:そうなんです。資料的に展示しているわけではないんですよ。この展覧会を構成するためにあるものなんで。
あと《眠る兵士》っていうのもいいですよね。眠りと死ってけっこう近いところにあると思うんです。
でも太郎さんが描いたのは眠りのほうで眠りと死が隣り合わせっていうのも、なかなか見る機会もないですしね。
ぜひここで見て欲しいですね。
――そしてこれはドクロですね。
弓指:これを最初に描いたんです。もとはこの写真なんですけど・・・右が岡本太郎なんです。
それなのにぼくは左を太郎さんだと思って・・・ほら、太郎さんってこういうポーズしますよね?
だから左が太郎さんだと思って描き出したら、途中経過報告で館長から「右が太郎だよ」って(笑)
やばい!ドクロ人間にしてしまった!でもちょっと待てと。間違っているこのままのいい加減さがこの絵には必要かもしれないと思って。結果として右も左も両方太郎さんになったんです。
戦争に行った時、初年兵の訓練で筋肉がついたらしいんですけど後半は食料がなくなってどんどん痩せていってしまう。だからこんなにマッチョなわけないんです。
それに中国軍が空襲をしてきていて、こんなふうに余裕で立っていられるわけないんですけれど、こうなったらどんどん間違った絵にしていこうっていう・・・
――この綺麗な青空も?
弓指:そうですね。いい感じに晴れてます。
でもそもそもこういう写真が残っていることがおもしろくて。
ぼくらの知ってる戦争はもっと悲惨で、飢えに飢えてみたいな感じですけど、でもこうして戦闘と戦闘の間には写真を撮ろうぜ!みたいな、その隙間みたいな時間には笑いがあったりとかしたと思うんです。
ぼくらの年代が戦場に行ったとして、やっぱり相当悲惨だし、人の死を見たり PTSD になったりもするんでしょうけど、でも冗談は言うだろうし。そこでなにか楽しいことが起きたりもするんじゃないか、そうしないとむしろ生きていけないと思うんです。
そういう人たちの思いみたいなものもこの絵には入れたくて、だから青空にしたんです。
――なんでドクロ人間にしたんですか?
弓指:わかりません(笑)
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【速報】弓指寛治 特別展示インタビュー!
:: February 11, 2019
