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Kosuke Sugimoto Talks ⑧ "Outsider"

杉本晃佑対談⑧「アウトサイダー」

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新進気鋭の映像クリエイターとして、多数のミュージックビオの、CM映像のディレクションを行っている映像作家、杉本晃佑さんとの対談です。

〈前回までは〉
①「音と映像が合った瞬間とか、生理的にゾクっと…」
②「漫画って、読むのは楽しいけど、描くのはそう楽しくなかったんで……」
③「音と映像が絡む瞬間」。
「ヤン・シュヴァンクマイエルなどの伝統的なチェコアニメを学びに行ったわけではないんですけど。」
⑤「毎回仕事のたびに新しいタッチに挑戦したいと思っているんですね。」
⑥「憧れの時代を疑似旅行してみたっていうイメージがいちばん近いかな。」
⑦「直球もあれば、ぼく以外にはわからないだろうなっていうフィルターもあって。」

第8回は「チャレンジ」。

「最初に『どこまで冒険するか』っていう話はするんですけどね。」

平野:ミュージックビデオの場合、主役というか、本来の売り物は音じゃないですか。でも人間だから、聴覚より視覚のほうが強い。

杉本:はい。

平野:ライブ映像のようなものならともかく、杉本作品のように〝音の説明〟ではない映像の場合、下手をすると映像が音楽の世界観を変えちゃうってことが起こり得ますよね?

杉本:そうですね。

平野:最悪の場合、その音楽に致命傷を与える可能性すらあるっていうくらいの、すごい仕事ですよ。もちろんうまく転がれば、音楽に新しい価値を加えることができるわけだけど。

杉本:映像作家という肩書きなんで、なにかしら作家性みたいなものを生かしたいという思いはあって…

平野:よくわかります。

杉本:ありがたいことに、ぼくにオファーをくださるクライアントは、みなさんチャレンジングな方々でして…

平野:なるほど!(笑)

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杉本:「ある程度のところまで来たから、次はまったく新しいことをやりたいんだ」とか、「いまはまったくゼロなので、とにかくなにかの色をつけて欲しいんだ」とか、そういうお話が多いんですね。それならもう喜んで色をつけようと。成功も失敗も含めてできる限りね。

平野:なるほど。

杉本:今回の〈Days of Delight〉のときも、「新しいものを!」というお話だったんで、ぜひぜひ! という感じでしたし。

平野:クライアントと杉本さんが手を携えて、新しいものを目指してチャレンジするっていう感じなんですね。

杉本:もちろん最初に「どこまで冒険するか」っていう話はするんですけどね。

平野:杉本さんに対して、新しい表現、新しい意味、新しい価値を求めるクライアントは、「安全第一。60点でいいから、そこそこのものを」などとは考えていない。

杉本:そうですね。

平野:でも、だからといって「オレがおもしろけりゃいいんだよ!」ってことにはならないでしょ?

杉本:もちろんです。

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平野:ちゃんと社会に届かなければ意味がないわけで。その際の判断の拠り所というか、羅針盤っていうか、ベンチマークにしていることってどんなことですか? なにを根拠に自分自身をコントロールしているのか…

杉本:その羅針盤、欲しいです。

平野:(笑)

杉本:よくわからないし、大層なことは言ないけれど、毎回「これが人生最後の作品」とは思っています。

平野:ああ。

杉本:「これで評価されて、オマエはいいのか?」って。

平野:オマエはこれでいいのか? これで死んで後悔はないんだな、と。いい話だな。

杉本:悔いが残らないようにできることを……あとはそうですね、自分のポートフォリオを見て、自分に欠けているのはこういうものだから次はこれもやっていかなければいけないとか、常に新しいものを成功させていれば次の道があるとか。いつも背水の陣で臨んでいます。

平野:悔いが残らないように、満足いくクオリティに仕上がるまで粘る、みたいなことはもちろんあると思うけど、そういうこととは別に、「はたして多くの人に見てもらえるのだろうか」とか「これで受け入れてもらえるだろうか」、あるいは「そもそもオレがやりたかったのはこういうことだったのか」とか……

杉本:よくわかります。

平野:ぼく自身もそうだけど、そういうことを考えるじゃないですか。でも「これでいい!」って決めるのは自分だし、いつもひとり。それをどうやって決断しているのか?…って、いま自分でしゃべりながら、「そんなこと訊かれても、オレ、答えられないな」と思った。

杉本:(爆笑) いま言おうと思ったんですよ、「それ、教えてください」って。

平野:うん(笑)。

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杉本:お話したように、ぼくにはアニメのオープニングを見て鳥肌が立つほど気持ちいい瞬間があった。自分の映像を見たときも、おなじように生理的に気持ちいいかどうか。それはけっこうシビアに出ますね。

平野:ああ、なるほど。

杉本:それは自分の意思とはまったく別のもので、肉体が勝手に反応するんで……

平野:わかる。よくわかります。

杉本:音と絵が合っているか、生理的にどうかっていうことに、肉体は正直に答えてくれます。

平野:そうか。杉本さんは自分の生理に訊いているんですね。

杉本:そんなこと考えたこともなかったけれど、言われてみればそうかもしれません。

平野:杉本さんのところには、いろんなクライアントがいろんなジャンルの仕事をもち込んでくると思うけど、オファーがあったとき、最初にどんなことから考えはじめるんですか?

杉本:えーと、まずはスケジュールですね。

平野:おお!(爆笑)

杉本:どういう仕事であれ、断るのはイヤなんです。だから最大限受ける方向で考える。そのためにはまずスケジュールですね。

平野:なるほど。

杉本:断るのはストレスなんですよね。それなら多少スケジュールを無理したほうがまし。

平野:中身のことは? その仕事にふさわしいテイストや世界観をつくり上げていくためには、いろいろなファクターを揃えて投入しなければならないわけでしょう?

杉本:はい。

平野:おそらくものすごく複雑な情報処理をやっているはず。意識しているかどうかは別にしてね。ぼくはそこに興味があって。どういう順番でどういうふうにパズルを解いていくのかと。



野島健児 Don’t Worry〜モノタリナイ物語〜

杉本:たしかにそうかもしれませんね……おっしゃるとおり意識してやってることじゃないけれど。最初は…そうだな…やっぱりテーマはなにかっていうことかな。

平野:テーマ?

杉本:たとえばミュージックビデオの場合、歌詞の中にメッセージがあって、そのメッセージを伝えたいっていうオファーがあったとしたら、もちろんそのメッセージを最大限に伝える方法を考えますし、そこにドラマが必要なのか、絵が必要なのか、絵の場合はショッキングな絵なのか、穏やかな絵なのかを考えます。そういうことが決まってから、どういう表現が合うのかを考えますね。

平野:なるほど。

杉本:あとは音楽を聴いたときに出てきた絵に対して、この絵は“引き”だろうとか、この絵は“寄り”だな、とか……

平野:出てきた絵? だって最初に音を聞いた段階では、まだどこにも絵はないでしょ?

杉本:曲を聞くと、その瞬間、自動的に情景が浮かんでくるんですよ。なんらかの映像っていうか…

平野:すごい! そのヴァーチャルなイメージに対して“引き”とか“寄り”をイメージするってことですね?

杉本:そうです。あとはそれにいいテーマはないかなとか、歌詞やいろんなものからモチーフをもってきて、一方ではそのモチーフを最大限に拡張しながら、一方ではモチーフから離れ過ぎないないようにしています。

平野:おもしろい!



次回は「カッコイイ」。

⑨「ひとり一人が自分の眼で見ている現実のほうがカッコいいと思っているんです。」

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杉本晃佑(すぎもと こうすけ)

映像作家

1983年生まれ。アニメーション・実写・3DCG・モーショングラフィックスなどを用いた映像と音楽とを緻密に融合させた構成、歌詞や広告商品などを独自に掘り下げたストーリー構築を得意とし、MV、CM制作を主として活動。近年はSEKAI NO OWARIやSCANDALのMV、NHKみんなのうたなどを手がける。また「the TV show」「これくらいで歌う」などの個人作品は国内外の多数の映画祭・コンぺティションで受賞。
2014年からプラハを拠点にヨーロッパでの活動も開始。映像監督を務めた3D映像コンサート「Vivaldianno 2015」はイギリス・ドイツ・チェコなど15ヶ国以上で上演、クラシックコンサートとしては異例の20万人以上の動員となる。2018年、東京に株式会社Studio12を設立。

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