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Kosuke Sugimoto Talks ⑩ "Outsider"

杉本晃佑対談⑩「アウトサイダー」

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新進気鋭の映像クリエイターとして、多数のミュージックビオの、CM映像のディレクションを行っている映像作家、杉本晃佑さんとの対談です。

〈前回までは〉
①「音と映像が合った瞬間とか、生理的にゾクっと…」
②「漫画って、読むのは楽しいけど、描くのはそう楽しくなかったんで……」
③「音と映像が絡む瞬間」。
「ヤン・シュヴァンクマイエルなどの伝統的なチェコアニメを学びに行ったわけではないんですけど。」
⑤「毎回仕事のたびに新しいタッチに挑戦したいと思っているんですね。」
⑥「憧れの時代を疑似旅行してみたっていうイメージがいちばん近いかな。」
⑦「直球もあれば、ぼく以外にはわからないだろうなっていうフィルターもあって。」
⑧「最初に『どこまで冒険するか』っていう話はするんですけどね。」
⑨「ひとり一人が自分の眼で見ている現実のほうがカッコいいと思っているんです。」


第10回は「濃さ」と「芸術的」。

「自分の好きな感覚に従って濃いもの、密度の高いものをつくろうと……」

平野:それにしても、アウトプットするだけだとネタ切れになっちゃうから、なんらかのインプットをしているはずですよね。それがYouTube でないことわかった。とすると、杉本さんはいつもなにを見て、なにをアーカイヴしているんだろう?

杉本:現実世界じゃないですかね。そこに対する嫉妬みたいなものもあるので。

平野:街を歩いているときも、いろんなものが気になってしょうがない?

杉本:そうですね。〝そこにあるそれ〟がすでにカッコいいわけです。交差点にしてみても。

平野:……交差点って、カッコいい?(笑)

杉本:カッコいいっていうか、きっちりしている、成立してますよね。それを仕事としてフレーミングしなければならなくなったとき、どうすれば〝パノラマに広がったきっちりした世界〟に勝てるだろうか? 「じゃあ、この部分をこの色にしてみよう」とか「3D にひねくれ曲がってつながったらどうなるだろう?」とか、そういうことを妄想しながら歩いてます。

平野:街を妄想しながら歩いている…

杉本:そうですね。そんなに深く考えているわけではありませんけど。

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平野:二つ目の「濃い」についてはどうですか。アレは意識的にやっていることなんでしょう?

杉本:はい。といっても、もともとは生理的なものですけど。

平野:濃いものが好きってこと?

杉本:気づいたらそうなっていたんです。部屋が整理整頓できないタイプだし。

平野:(爆笑)

杉本:いまは比較的すっきりした部屋に住んでますけど。いろいろごちゃごちゃ詰め込んでしまって、どれもすべてに愛着をもってしまって捨てられなくなっちゃうんです。

平野:なるほど(笑)。

杉本:映像もおなじで、最初はそんな感じで生理でやってたんです。その後、正しい論法を学ぼうとしたこともあったんですよ。本にも「ちゃんと整理したほうがいい」と書いてあったし。でも、それだと普通の映像になってしまうような気がして…。

平野:うん。

杉本:やっぱり自分の好きな感覚に従って濃いもの、密度の高いものをつくろうと……

平野:ああ、なるほど。「濃い」っていうのはいわば好みの問題であって、そのほうがメリットがあると考えて戦略的にやっているってわけではないんですね。

杉本:情報量を詰め込みたいんです。ぼくのつくる映像って、短いでしょう? でも、腹のなかでは2時間の映画に勝てるような作品をつくりたいと思ってますから。

平野:すごくよくわかります。

杉本:どうしても1回見ただけでは気づかないバックグラウンドとか、ギミックを考えてしまいますね。

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平野:発想がマルチ映像的ですよね。さっきリスボン万博日本館でマルチイメージ映像をつくった話をしましたけど、そのときは、わずか13分の作品のなかに4000カットの静止画と90分の動画を詰め込んだんです。

杉本:すごい!

平野:そうなると、とうぜんながら1回ですべてを見ることはできないし、観客は大きなマルチ画面を前にして「なにを見るか」を自ら選ばねばならない。テレビのように受け身ではいられないわけですね。

杉本:たしかに!

平野:その結果なにが起きたかというと、リピーターがメチャクチャ増えたんです。2回目以上の来館者が23%にのぼった。万博パビリオンでは前代未聞の数字です。

杉本:ほんとにすごいなあ。

平野:杉本さんは数分の映像のなかにそれとおなじ構造をもち込んでいるってことですよ。

杉本:そんなふうにお客さんに足を運ばせたいっていうのはありますね。

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平野: 3番目の「芸術的」っていうことですが、これは何度も言ってきたように、説明的な〝教材ビデオ〟ではないっていうことなんだけど……

杉本:はい。

平野:説明はもちろんダメだけど、意味不明でもダメじゃないですか。ぎりぎりのところで踏ん張っていなければいけない。

杉本:はい。

平野:説明映像をつくるのは簡単だし、「オレがおもしろいと思うのはコレだ!」ってひとりよがりでつくるのも簡単です。しかし、単純な「説明」に陥らず、しかしメッセージはきっちり伝えることはむずかしい。
杉本さんはそのあたりがすごくうまいと思うんです。さっきもそんな話になったけど。

杉本:ありがとうございます。

平野:きっと「これならいける!」「これ以上はダメだ」と、経験のなかで培ってきた直感で判断しているんでしょうね。

杉本:そうですね。経験もありますし。そもそもぼく自身、直感や感性でつくられたものを理解できないタイプなんですよ。

平野:え?

杉本:あまり感受性が豊かじゃなくて……

平野:なにを言ってるんですか(笑)。



喜多村英梨 / 「妄想帝国蓄音機」Music Video(Short Ver.)

杉本:いやほんとうに。論理的なもののほうが理解しやすいし、感覚的につくられたものはむずかしいと感じるんです。自分としてもまずはロジカルに理解できるものをつくりたい。もちろんその一方で、なにがしか作家性を残したい。毎回そのバランスを探しているっていう感じです。

平野:てことは、一発でスパーンと決まるわけじゃなく、いろいろ試行錯誤して?

杉本:試行錯誤します。

平野:そうなんだ。

杉本:ロジカルに寄りすぎて、わかりやす過ぎるから、もうちょっとこうしようとか。

平野:よかった。なんかちょっと安心した(笑)。



次回は最終回。
「アウトサイダー」。

「ぼくにはアウトサイダーだってことがずっとつきまとっているんですよね。」

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杉本晃佑(すぎもと こうすけ)

映像作家

1983年生まれ。アニメーション・実写・3DCG・モーショングラフィックスなどを用いた映像と音楽とを緻密に融合させた構成、歌詞や広告商品などを独自に掘り下げたストーリー構築を得意とし、MV、CM制作を主として活動。近年はSEKAI NO OWARIやSCANDALのMV、NHKみんなのうたなどを手がける。また「the TV show」「これくらいで歌う」などの個人作品は国内外の多数の映画祭・コンぺティションで受賞。
2014年からプラハを拠点にヨーロッパでの活動も開始。映像監督を務めた3D映像コンサート「Vivaldianno 2015」はイギリス・ドイツ・チェコなど15ヶ国以上で上演、クラシックコンサートとしては異例の20万人以上の動員となる。2018年、東京に株式会社Studio12を設立。

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