Repos

Special course report ②

「芸術と社会の接点―岡本太郎のパブリックアート」特別講座レポート②

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2019年3月9日(土) 19:00~ に岡本太郎記念館で行われた川崎市岡本太郎美術館学芸員であり、岡本太郎記念館の客員研究員である大杉浩司さんによる特別講座のレポート二回目をお届けします。

大杉:ちょうどこの頃ですね。銀座の髙島屋デパートが内装の改装工事をしていました。その改装のデザインを担当していたのが坂倉順三という建築家です。彼は地下鉄からデパートまでの地下道のデザインもしていました。岡本太郎はパリ時代からの盟友である坂倉さんに頻繁に会い「俺は最近モザイクで作品を作り始めた」と自分の仕事をアピールしています。≪太陽の神話≫を見せるためにアンデパンダンの会場に坂倉さんを誘ったりもしています。そして「君が関わっている地下道に自分の作品を加えないか」と、積極的に薦めるわけです。それで坂倉さんが「いいね。じゃ太郎さんに頼もうか」ということで作ったのが岡本太郎の最初の壁画となる《創世》です。

5.上と左「創生」右下「顔」
大杉:モノクロでしか残ってないですけれど、坂倉さんの地下道のデザインはすごくモダンで近代的なデザインです。そこに岡本太郎が無邪気でカオス的なデザインを打ち出します。これは後々の都庁の壁画や大阪万博の《太陽の塔》にも通じるのですけれども、岡本太郎のパブリック作品はこうした対決の姿勢が基本です。つまりその場の空間に従属するような作品ではなく、むしろその空間と対立するような要素持って作られています。絵画が建築の従属物でなく対等な存在であるという意味もあります。

大杉:この≪創生≫は≪太陽の神話≫と同じ常滑の伊奈製陶で作られましたが、その作業の合間に作ったのが陶製の《顔》です。何でこんなものを作ったかというと、このちょっと前に草月流の勅使河原蒼風さんと生け花についての対談をしているんです。そこで太郎は勅使河原さんの生け花作品に対し「ただ綺麗なだけでおさまっている」っていう辛辣な批判をするわけです。そのとき勅使河原さんが「じゃあ太郎さん、自分が花器を作って花を生けてみればいいじゃないか」と勧めたらしいのです。それで伊奈製陶は焼き物の工場だし、時間もあったので作ったのがこれなんですね。実はこの《顔》という彫刻は三体作っています。どうして三体作ったかというと太郎さんは大きな焼き物を作るのが初めてだったので、焼き物というのは粘土に空気が残っていると焼成中に破裂することがあります。「どうせ破裂してうまく焼けないだろうから、三体作っておこう」というので三体作って焼いたら三体とも綺麗に焼けたという……。これはのちのち太郎さんの父である岡本一平のお墓になるものです。太郎はこれを「お墓の革命」と呼んでいます。

6.顔
大杉:隣にあるのが母・岡本かの子さんのお墓です。≪顔≫の一つは、一平さんのお墓、もう一つが岡本太郎美術館に所蔵され、そしてもう一つは伊奈製陶の社長さんにあげたらしいですね。

大杉:さきほどモザイクタイルの作品を見てもらいましたけれど、実は岡本太郎さんにしては物足りないものがあったんですよ。1cm 角のタイルですからどうしてもドットが出るんですね。岡本太郎の作品は有機的な曲線が命ですから、この曲線がガタガタしているのが不満に思えてきた。そこで今度はモザイクに変わるもう一つの素材としてクラッシュタイルというのを使うんです。クラッシュタイルというのは大きめのタイルを割って、こう不定形な形ですね。この不定形な形をうまくつなぎ合わせるとドットがなくなって、綺麗な曲線や直線が生まれるのです。写真は≪遊ぶ≫という作品ですが、これは国鉄神田駅の構内に展示されたものです。

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大杉:モザイクタイルからクラッシュタイルへと太郎の作品はいろいろな素材を使ったものに進化にしていきます。これまではあくまで四角く切り取られた支持体の中の平面の作品。それは絵画と言う岡本太郎のイメージの世界でしたが、ここから進化したのがレリーフです。レリーフというのは凹凸があります。つまり作品は、イメージの世界から空間に突き出る、現実のものとして現わされるわけです。岡本太郎はこれ以後レリーフ作品を非常に多く作るようになります。タイルよりもレリーフのほうが見る者により強いインパクトを与えわけです。

8.踊り
大杉:この≪踊り≫と言う作品は、昔の大和証券の本社ビルの階段の踊り場に作られた作品です。面白いなと思うのは、レリーフというのは多少の凹凸がありますから視線が変わるとまた表情が変わってくるんですね。これは階段の踊り場にありますから、上から見たイメージと下から見るイメージが違うんです。見る方向とか角度によっていろんな表情が変わる。しかも、四角い画面でなく踊り場の空間全体が作品となるのです。

大杉:そしてレリーフという技法を使った作品が、大きな結晶となるのが次の≪日の壁≫です。今は東京都庁というと新宿にありますけれど、昔の旧都庁というのは今の東京国際フォーラムの場所にありました。旧都庁は建築家・丹下健三の設計によるものです。当時、丹下さんはこの旧都庁を設計し、躯体の工事も大分進んでいた頃、1階の吹き抜けのエントランスホールに、何か物足りなさを感じていたらしいのです。そこで、岡本太郎に相談して「太郎さんなんかここに作品を作らないか」と、持ちかけるのです。「よっしゃ!」と太郎はすぐ建設中の現場を視察しています。丹下さんとしては「エントランスを囲む廊下あたりに壁画でもあったらな」と考えていたらしいのですが、岡本太郎は「この空間の正面にある床の間みたいな壁にこそこそ力強い壁画が必要だ」と考えて、モザイクタイルよりインパクトのあるレリーフの力強さを持つ壁画を作りました。

9.日の壁
大杉:丹下健三さんは近代建築のパイオニアですから、都庁もコンクリートの打ちっぱなしの直線的で合理的な近代建築です。岡本太郎は「こういう空間だからこそもっと人間的な熱いもの。原色で人間的な力強さを!」ってこの《日の壁》という作品を作ったんです。

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大杉:この日の壁の90度曲がったところにも壁があるんですけど、そこにも日に対して《月の壁》という壁画を作っています。《日の壁》が情熱的な力強い壁であるのに対して《月の壁》というのは静謐を物語るような……そういうイメージの壁ですね。

10.左「月の壁」右上「日の壁」右下「建設」
大杉:エレベーターホールの入り口にもやっぱりレリーフの壁画を作っています。右上の《建設》という壁画です。丹下さんに誘われて都庁の建築現場に入ったときにツルハシやら足場がいっぱいかかっているのが非常に面白い空間だと。それをイメージして作られたものです。丹下さんが最初に想定していた廊下にも岡本太郎は壁画を作成しています。残念ながら旧都庁は壊されましたし、そのときに壁画も一緒に瓦礫になったわけで……もう見ることはできないんですけれど、これが最初に丹下さんと太郎さんがコラボレーションしたというか、一緒に仕事をした第1号ということですね。

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