Repos

Special course report ③

「芸術と社会の接点―岡本太郎のパブリックアート」特別講座レポート③

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2019年3月9日(土) 19:00~ に岡本太郎記念館で行われた川崎市岡本太郎美術館学芸員であり、岡本太郎記念館の客員研究員である大杉浩司さんによる特別講座のレポート三回目をお届けします。

大杉:平面から、レリーフ、そして作品はいよいよ立体になります。長野に千曲市というところがあって、昔、戸倉上山田ヘルスセンターという第3セクターで作られた温泉施設があったんです。それができるときにその開発会社の社長さんと岡本太郎さんが友達だったらしくて、「自分の作る温泉施設には、ちょっとした遊園地もあるし、そういうところにふさわしい彫刻を作ってくれないか」と頼まれて作ったのがこの作品なんです。

11.無籍動物
大杉:これはですね。サイズがはっきりわからないんですけど高さが大体4m 幅が5m くらいかな。かなり大きな本格的なコンクリート彫刻です。さっきもいいましたけど岡本太郎さんはもともと画家ですから。こういう本格的な彫刻なんて作ったことがないので、武蔵野美術大学の彫刻科の学生さんを3人助手として雇いまして、この記念館1階にあるアトリエでこの彫刻の原型を作りました。最初は木で骨組みを作って、そこに油粘土で原型を作っていきます。そこに石膏で型をとり、その型にコンクリートを流して作ります。でもね、原型を作ったのはいいけど大きくて出せなくなっちゃったんですね(笑)。岡本太郎本格的彫刻作品の第1号です。

12.無籍動物
大杉:彫刻は温泉施設の遊園地ゾーンに置かれたのですが、残念なことに、そのあとに松代に群発地震があったらしくて全体的にひびが入って今では現存はしていないのです。現在、温泉施設は千曲市の直営となり、「ゆのさとちくま白鳥園」と言う名前で、リニューアルされ立派な建物になっています。ヘルスセンター当時、小さいサイズの彫刻も施設の入り口に置かれていましたが、今もそのままの状態で作品は残っています。ところで、この作品の名前ですけど、岡本太郎さんは自分の作品に題名はいらないと言っています。題名をつけると見る人が題名からの先入観で作品を見てしまうから、むしろ作品には題名はいらないのだそうです。題名は見る人が勝手につけていいと。その理由もあってか、この作品の題名は一般から公募して《無籍動物》、国籍のない動物っていうことですかね、この名前になりました。

大杉:今まではコンクリートの彫刻ですが、どんどん太郎の彫刻は進化します。素材の多様性といいますかね。太郎さんはいつも新しいものにチャレンジするんです。左の写真、これは松屋デパートの1階の吹き抜け空間に作られた作品なんですけれど……写真ではわかりにくいですかね。

13.メリーポール
大杉:これは蛍光管なんです。それを組みあせて人型にして《真夏の夢》という題名がついています。蛍光灯を彫刻の素材としているのはこの時代としては画期的ですね。一過性のイベントで作られたもので、恒久的に設置された作品ではないのですが、デパートのパブリックスペースに制作した作品として紹介します。

大杉:右の写真は、池袋の駅前に作った《メリーポール》という作品です。光をうまく素材として使ったもので、今でこそいわゆる光による造形表現というのは当たり前に使われていますけれども。この時代に彫刻を作る要素として光を使うっていうのは非常に斬新ですね。《メリーポール》がすごいと思うのは、アルミの板を丸めてその中にライトが仕込んであるのです。この時代の看板などの照明といえば灯体そのものが露骨に表面に露出してピカピカ光るものが多いのです。今でこそ間接照明っていうのが当たり前に使われていますけど、まだこの頃の日本では間接照明なんていうものは一般的には使われていない時代です。それでも中に光を仕込むことで、反射した色とりどりの光が造形をつくる要素となっていて、すごく素敵な作品だと思います。これも池袋の商店街がお金を出してクリスマスツリーとして作られたものなので、クリスマス終わったあとに撤去されてしまいましたが……記念館にはこれのマケットがありまして。たまに展示されるようですので、多分クリスマスの時期かなんかに出ると思うので、ご覧になってください。

14.誇り
大杉:今度はまたコンクリートの彫刻になるんですけれども、これは多摩川を挟んで二子玉川の反対側の川崎市高津区二子というところにあります。これは岡本太郎のお母さん、岡本かの子の文学碑として作られたものです。岡本かの子さんは文学者でありまして、多摩川をこよなく愛し、多摩川を詠んだ歌も多く残っています。普通文学碑というと大きな自然石に「岡本かの子文学碑」って書いてあるていどのものなんですけど、せっかくなら息子の太郎に頼もうと依頼されて出来上がってみたらすごい彫刻になってしまった。コンクリのグレーな色の基壇に純白の彫刻が映える綺麗な作品です。

15.国立代々木競技場「眼」
大杉:また壁画に戻りますが、東京オリンピックの水泳の競技場として作られた代々木第1体育館です。これも丹下健三さんの設計した建物です。このときも丹下さんから「太郎さん、俺の空間に作品を作ってみないか」といわれて作ったものです。運動施設ということで岡本太郎が作ったこの壁画は《眼》という題名ですけれど、どこが眼なのか僕にはわからないですが……これはレリーフとモザイクが複合的に使われています。レリーフの強さに加えて背景の色のグラデーションがモザイクタイルによって彩を添えています。

16.国立代々木競技場
大杉:スポーツ施設ということで岡本太郎さんは人間の体の部位をモチーフに作品を作っています。また特筆すべきなのは、旧都庁の壁画は、躯体とともに壊されたてしまいました。日本万国博の《太陽の塔》も丹下さんの大屋根は撤去されなくなってしまった……そういう意味では丹下さんの建築と岡本太郎の作品が今でも共存しているのは唯一この代々木体育館が最後となってしまいました。今度のオリンピックでもまたこの体育館が使われるらしいですね。

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