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Special course report ⑤

「芸術と社会の接点―岡本太郎のパブリックアート」特別講座レポート⑤

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2019年3月9日(土) 19:00~ に岡本太郎記念館で行われた川崎市岡本太郎美術館学芸員であり、岡本太郎記念館の客員研究員である大杉浩司さんによる特別講座のレポート五回目をお届けします。

19.明日の神話
大杉:さあ、いよいよ1960年代も最後になりました。皆さんもこれはよくご存知だと思いますが《明日の神話》です。岡本太郎最大の壁画です。この壁画は、もともと渋谷駅の為に描いたわけではなく、メキシコのホテルのロビーに頼まれて描いたものです。ではなぜ岡本太郎はホテルのロビーに骸骨の絵なんて描いたのか? 日本のホテルだったらホテルのロビーに骸骨の絵は描かないでしょうね。ところがこれを見たメキシコの人たちはすごく喜んだらしいです。というのも、メキシコの人にとって骸骨というのは死を象徴するアイテムでもありますが、死というものは必ず表裏一体として生が存在する。生があるから死があり、死があるから生がある。メキシコの人にとって骸骨は生を象徴するようなおめでたいアイテムなのですね。メキシコにも日本と同じようなお盆がありまして「死者の日」といいますが、お墓をマリーゴールドで飾って、街中に骸骨の旗を垂らしたり、骸骨のキャンディーなんかを作って祝います。

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大杉:この《明日の神話》というのは広島、長崎の原爆で生まれたキノコ雲が描かれています。つまりこの壁画は原水爆の悲劇がモチーフとなっています。でも悲劇というジメジメしたイメージはないですね。何故岡本太郎はわざわざメキシコの地でこの壁画を描いたのかが問題です。これは僕の想像ですけども、このメキシコシティのホテルというのは1968年のメキシコオリンピックに向けて作られたホテルです。オリンピックですから世界中の人たちが集まる。岡本太郎はここで日本の一番誇りとするものをテーマとしてあげたのだろうと思っています。岡本太郎にとって日本の誇りって何かと言えば、奈良の大仏でも浮世絵でもなくて、日本という国は二度も原爆を落とされながらもその悲劇を乗り越えて今日の社会を作ったことなんです。東京も焼け野原になった。戦争によって日本中が焦土と化しました。しかし、原爆の負のエネルギーをはるかに勝る人間の生のエネルギーがあったからこそ今日の日本と言う国が築き上げられたという事実です。人間の持つ哄笑の力、人間が生きるという力は原爆の負のエネルギーよりも強いのだぞ。こういったものを太郎はメキシコで世界中の人にアピールしたかったんじゃないかなと思っています。残念なことにホテルは1968年のオリンピックに完成できなくて、壁画は残されたままオーナーも変わり、建物は現在ワールドトレードセンターとなっています。壁画はそのまま行方不明となりました。岡本敏子さんは「《明日の神話》の壁画を探すんだ。絶対あるはずだ。」「これを探し出して日本に持ち帰るのが私の最後の仕事だと」とまで言っておられました。そして、八方手を尽くしてメキシコシティの郊外に置かれていた壁画を探し当てたんです。無事壁画を船に積んで、「積み終わりました。明日、出航です」っていう連絡をもらったその日に敏子さんは亡くなってしまうんです。非常に運命的なものを感じますよね。
ボロボロになっていた壁画は日本に持ち帰えられ修復され今は渋谷に設置されています。

20.万博
大杉:この《明日の神話》の双璧をなすといわれたのがこの日本万国博覧会の《太陽の塔》です。さきほど岡本太郎のサイトスペシフィック(場の固有)という意味には対立軸を持つとお話ししました。≪太陽の塔≫の対立軸となるのは、万博そのものであり、造形的には丹下健三さんの設計された大屋根です。岡本太郎がこのテーマ展示のプロデューサーを引き受けてくれといわれたときすでに丹下さんは大屋根の構想を打ち出していて、事務所にはこの模型がありました。太郎さんがテーマ展示プロデュースを引き受けるためにその模型を見たとき、「どうもこれをボガント突き抜けたくなる」といって70mの塔の構想を打ち出します。対立軸でいうといわゆる近代的なこの建築に対し古代的な造形の対立。もう一つは、水平構造の屋根に対して垂直の塔と対立軸が生まれます。

21.万博
大杉:岡本太郎がいう対立するということは喧嘩して相手をコテンコテンにすることでなくて、ぶつかるがゆえに自分と相手は違うんだということを認め合うことなのです。その異質が共存することによってお互いの持ち上げを引き立てる。そういう空間が岡本太郎の求める対立軸といえるじゃないかと思います。

22.太陽の塔
大杉:≪太陽の塔≫には4つの顔があります。当時のゲートをくぐって最初に見えるものがこの塔のお腹です。てっぺんの顔は見えないんですよね。この現代を象徴するお腹の顔が万国博に来た人を最初に迎えるわけです。そして一番上の未来の顔といわれている《黄金の顔》は万博の会場のどこからでも見える象徴的な顔であり、この裏側にあるのが《黒い太陽》という顔です。これは儀式を見守る顔という意味も持っています。

23.太陽の塔
大杉:当初、太郎さんのデザインにはこの《黒い太陽》の顔というのはなかったのです。《太陽の塔》の後ろ側に「お祭り広場」という広場がありまして、万博の開会式とか閉会式が行われたんですけど、世界中から元首が集まる場所です。ところが《太陽の塔》はそこに背中を向けることになります。そこで関係者の方から「背中にも象徴的なものを作っていただけませんか?」といわれて。太郎さんが「よっしゃ!背中には黒い太陽をつけてやろう」って付け足した顔なのです。ここが岡本太郎らしいすごさなのですが。有名な芸術家が作品に注文をつけられたら「俺の作るものにケチをつけるな!」なんて怒ると思うんですけど、太郎さんはそうではなくて、いろいろな条件をみんな引き受けるんです。引き受けて自分の中で造形的に昇華して結果的に素晴らしいものになる。

24.いのち
大杉:当時の地下展示室《いのち》です。大阪万博に行ったとき私は10歳だったんですけれども、度肝を抜かれましたね。初めてブラックライトというのを見たのもこの時だったと思います。

25.いのり
大杉:地下の展示室には世界中からの民族資料を集めました。この空間には作り物じゃなくて人間が自然と対峙することによって文明が生まれたという、その誇らかな象徴を置きたいと考えていたようです。この写真《地底の太陽》は4番目の顔ですね。

26.生命の樹
大杉:そしてこの塔内にはこの《生命の樹》がある。去年の3月でしたか。リニューアルされて今また再び輝きを取り戻していて見ることができます。

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