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Daisuke Sasaki Talks ① "The spirit of Jomon"

佐々木大輔対談①「縄文の精神」

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日本人でただ一人、世界で最も過酷で危険なエクストリームスポーツの「スキーベースジャンプ」をされている佐々木大輔さんとの対談です。
第1回目は「スケッチブック」。

②「こういうものは、うちにあってはいけないです!」
③「ほんの数秒間なんですけど、その数秒間だけ、時がゆっくり流れていくんです。」
④「じつはわたしは高いところが怖くて。」
⑤「繰り返しイメトレをしながら、何回も死にます。」

「この絵はわたしの母親が岡本太郎さんに描いてもらったものなんです。」

平野:今日はスキーベースジャンパーの佐々木大輔さんをお招きしています。「スキーベースジャンプ」は世界一危険なスポーツと言われていて、“ベースジャンプ ” (崖や建物などからのパラシュートを使ったダイビング)と “スキービッグマウンテンフリーライディング” を融合させたスポーツだそうで、しかも佐々木さんが日本人では唯一のジャンパーとのこと。おもしろい話が聞けるにちがいないと楽しみにしていました。よろしくお願いします!

佐々木:こちらこそ、どうぞよろしくお願いします!

平野:さっそくスキーベースジャンプについておうかがいしたいのですが、その前に今日、なにかお持ちいただいているそうですね。

佐々木:このスケッチブックなんですが…

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平野:こちらは?

佐々木:この絵はわたしの母親が岡本太郎さんに描いてもらったものなんです。

平野:えっ!

佐々木:母は村上善男先生(美術家。芸術新潮で岡本太郎が連載していた『芸術風土記』の岩手取材での全日程に同行し、自らの出生地岩手を案内した)の教え子だったんです。

平野:あの村上さんに絵を習っていた?

佐々木:そうなんです。岡本太郎さんと村上先生が一緒に岩手を歩かれていたときに・・・

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平野:それって、もしかして芸術新潮の取材のときかな。50年代ですか?

佐々木:わたしの母親が、おそらく当時12歳で、いまが75歳ですから・・・63年前?

平野:63年前っていうと1956年あたりか…。東北の旅をして『芸術風土記』に書いたのが・・・えーと、ちょっと資料を見ますね・・・あ、57年だ! やっぱりこのときかもしれないな。

佐々木:そうかもしれません。

平野:62年前に村上さんが太郎を案内したんですよ。

佐々木:じゃあ、きっとそのときですね。

平野:すごいな。貴重ですよ。

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佐々木:この手紙は最近、母が書いてくれたものなんですけど・・・村上先生が母親の幼なじみの千恵ちゃんという子に「太郎さんと歩くからカバン持ちをしてくれ」って頼んだらしいんです。それで千恵ちゃんは一緒にくっついて歩いていたんだけど、途中でわたしの母親と伯母さんを見つけて。太郎さんたちがイチゴ畑でイチゴを食べたりしているときに、伯母が「なにか描いてちょうだい!」って太郎さんにスケッチブックを渡して描いてもらったそうなんです。

平野:じゃあ、この3人の女の子は、おふくろさんと友だちの千恵ちゃんと・・・

佐々木:わたしの伯母です。

平野:伯母さんっていうと? おふくろさんの…

佐々木:姉です。この真ん中で一番ぷっくりしているのが母で、こっちが千恵ちゃん、カバン持ちをしていた子です。

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平野:太郎は頼まれるとよく描いていたらしいんですよね。たとえばどこか地方に行って、地元のおいしい郷土料理をごちそうになってゴキゲンなときなんかに、「先生、ぜひ!」って色紙を出されると、その場でサラサラと描いていたらしい。ときには店の襖みたいなところにもね。

佐々木:へえ、そうなんですね。

平野:ただ、大抵はサインや書の類であって、人物を描くなんてことはない。

佐々木:えええ?

平野:そもそも太郎は写実的な人物画をほとんど描いてないですからね。

佐々木:あ、そうなんですか。

平野:つい最近まで、ごく限られた例外を除いて人物画は一枚もないと思われていたくらいです。例外とはデスマスク。父・一平や横光利一(日本の小説家・俳人・評論家)のデスマスクなんかが残っているのは知られていたんだけど・・・

佐々木:はい。

平野:いわゆる人物を写生するみたいなことはしなかった人だと思われていたんです。でも8年くらい前だったかな、資料室から写実的なスケッチが見つかったんですよ。太郎自身や敏子、いとこたち、そういう・・・

佐々木:ごく親しい人たちですね。

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平野:もちろん作品として描いたわけじゃありません。だれか見せるために描いたわけじゃなくて、気が乗ってササッと描いただけでしょう。それが存在さえ知られぬまま何十年も経って見つかったんです。のちにそれらを紹介する企画展をやりました。

佐々木:太郎さんが人物を描くっていうのは、それくらい珍しいことなんですね。

平野:そう。しかも出てきたスケッチはいずれも身内ばかりです。でも、この絵はたまたま出会った見ず知らずの子たちでしょう?

佐々木:そうですね。

平野:いきなりスケッチブックを差し出されて、こういうものを描いたっていうのは、もしかしたら唯一かもしれないな。

佐々木:わあ!

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平野:よっぽど3人がかわいかったんじゃないかな、純朴で。あるいはこの子たちの振る舞いや表情のなかに東北の心が宿っていると感じたのかもしれない。いずれにしても、瞬間的になんらかの親近感が湧いたにちがいない。

佐々木:すごいことですね。

平野:おなじシチュエーションになったとしても、こういうことはまず起きない。とにかく極めて珍しいし、貴重です。

佐々木:これ、額に入れて青森の実家に飾っていたんですが、この先どうしたものだろうと…

平野:はい。

佐々木:今回こういうご縁をいただいたので、いいチャンスだと思って母親に言ったら、「お預かりいただけないものかしら」って言うんです。あの、もしお願いができたら・・・

平野:もちろんです! 記念館でお預かりして後世に伝えていきます。

佐々木:よかった。嬉しいです!

平野:いずれ一般の方たちにもご覧いただく機会をつくりますよ。

佐々木:ありがとうございます。



次回は「スケッチブックの謎」

「こういうものは、うちにあってはいけないです!」

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佐々木大輔(ささきだいすけ)

1977年 青森県十和田市出身
2003年 アラスカ・フリーライドチャンピオンシップ優勝(日本人唯一)
2013年 富士山スキーベースジャンプ(世界初)
「スキーの歓び、可能性を世間に広める」を目標に “ベースジャンプ ” と “スキー” を融合させた「スキーベースジャンプ」で表現し最驚を目指す。
妻まなみが同行し撮影、日本のスキーベースジャンプエリアを世界でただ一人開拓し続ける。

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