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Toshiro Inaba Talks ① " Avant Garde Medicine "

稲葉俊郎対談①「アヴァンギャルド医療」

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東京大学医学部付属病院循環器内科助教で心臓カテーテル治療、先天性心疾患、在宅医療、山岳医療が専門の稲葉俊郎さんとの対談です。
第1回目は「心臓のメカニズム」

②「宇宙の銀河の形も、植物の形も、竜巻も・・・螺旋ですよね。」
③「心の自然に反すると、バランスが崩れて病として表に顔を出す。」
④「共通体験として、やはり川を境界線として語る人は多いですね。」
⑤「当時のぼくに関心は、自分とは一体何者なのか、なんのために生まれてきたのか、」
⑥「できるのが基本で、むしろできなかったときの落胆のほうがはるかに大きいです。」
⑦「全体の関係性を結びなおしながら生きていくことを大切にしたいんです。」
⑧「ぼくはもっと、みんながより良く生きていくための場をつくりたいんですね。」
⑨「寝て、起きて、ご飯を食べて、仕事をして、また寝て・・・」
⑩「身体を知ることが世界平和につながると本気で考えているからです。」

「ぼくは『動いている生命』に魅力やロマンを感じました。」

平野:きょうは、とてもヘンでイケてるドクターをお招きしています(笑)。東大附属病院の循環器内科に勤務するバリバリのエリート医師でありながら、近代医学の枠を超えて伝統医療や民間医療を広く学び、一方で、テレビで大友良英さんと対談したり、UAと音楽のワークショップをやったり……クリエイティブなフィールドでも活躍している。アートへの造詣も深く、ご自身も能を嗜み、なにより岡本太郎を敬愛している。こんな医者、他にいます?(笑)

稲葉 :(笑) きょうは楽しみにしていました。どうぞよろしくお願いします。

平野:こちらこそ。ところで、本題に入る前にひとつどうしても訊いておきたいことがあるんですけど、いいですか?

稲葉 :はい。なんでしょう?

平野:じつはこどもの頃からすごく不思議だったんですよ。小学生みたいな質問だから恥ずかしいんだけど……、あの、心臓って、どういう理屈で動いているんですか?

稲葉 :基本的には、心臓って筋肉なんです。心臓の筋肉を特に心筋と呼んで、その他の筋肉と区別します。体を動かすのが骨格筋、内臓や血管を動かしている平滑筋、そして心臓の心筋の3種類です。筋肉は細胞が繊維状になっていて、とっても特殊です。筋肉の中でも死ぬまでずっと動き続けている心筋はさらに特殊なんです。

平野:動物の身体のいちばんの根っこに心臓があって、それが動いているから血が通い、いきものは生きている。そう理解しているんですけど……

稲葉 :はい。合ってます。

平野:つまり心臓は、臓器のヒエラルキー、主従関係でいえば「主」のイメージですよね? その主たる存在を、一体なにが駆動しているのか。それがすごく不思議で。たとえば、何者かが心臓に動力を供給しているっていう話ならわかるんだけど。

稲葉 :ああ、なるほど。鋭いです。実は。その辺りはよくわかっていないんですよね。

平野:あ、そうなの?

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稲葉 :基本は電気のように活動電位で動いているんです。電気パルスが伝わって筋肉繊維が縮んだり伸びたりする。電気が伝わることで筋肉がキュッと収縮することが基本です。

平野:電気で収縮するっていうのは、なんとなくわかります。

稲葉 :心臓の中に洞房結節という場所があって、そこが電気刺激を1秒間に1回のリズムで出していて、その刺激が波のように他の心筋に広がっていく。そこまでは確かなんですけど、そもそもなぜ洞房結節は自動的に動き続けているのか、その根本の仕組みがわかっていないんですよ。

平野:なるほど。ってことは、いきものがどういう原理で生きているのか、そのいちばんの根っこのところが、まだわかっていないんだ。

稲葉 :そうなんです。たとえば、女性が妊娠したかどうかを調べるときにいろんな検査方法があります。子宮の中になにか小さい塊のようなものが生まれます……

平野:塊?

稲葉 :いわゆる受精卵です。男性の精子と女性の卵子が結合したものです。超音波で見てみると、「何か」新しいものが女性の体の中に出現した、ということはわかりますよね。でも、それが果たして生きているものなのかどうか、それは「何か」を見ただけではわからないんですよね。

平野:それが生命かどうかの判断っていうのは……?

稲葉 :その「何か」が動き出したかどうか、つまり、心臓がリズミカルに動き出しているのが見えます。それを見て、あ、やっぱり生きているんだって。

平野:心臓が動いているから生きている。やっぱりそれが生命の証なんだ。

稲葉 :妊娠4週目くらいで、6ミリ程度しかない「何か」のさらに中にある「何か」が動きはじめます。「何か」が1ミリ、2ミリ・・・そうしたときは止まっています。生きている実感を感じにくいですよね。

平野:動いていなければそう思いますよね。

稲葉 :でも心臓が動き出しているのを見て、「あ、生きてる!」って思うんです。

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平野:生命の根っこは心臓である、っていう理解で間違ってないんだな。

稲葉 :ぼくはそう考えています。はじめに植物的な世界である内臓の世界がリズミカルに動き出しはじめたのが確認されて、その働きで脳を含めた動物的な臓器ものが育っていくのだな、と実感できる。

平野:にもかかわらず、なぜ最初に心臓が動き出すのか、どんなメカニズムで動いているのかがわからない。不思議だなあ…。不思議だけど、メチャクチャいい話ですよね。やっぱり〝いのちの話〟はこうでなくっちゃね。

稲葉 :(笑) たぶん生命の歴史のなかでいろんな実験が行われたと思うんですよ。「なにからはじめてみようか?」みたいにね。そのたくさんの実験の中で心臓が勢いよく動き始めるスタイルが結果的にいちばん良かったからそうした仕組みになったんじゃないかとぼくは感じているんです。

平野:そうか。心臓からはじめた種が勝ったわけだ。

稲葉 :勝ったというか……それがきっといろんな条件の中で都合が良かったんでしょうね。生命の歴史って、あらゆるパターンを実験的につくってみて、色んな自然環境の中で生きてみて、そのなかで何かが結果として残る。それでまたバリエーションをつくって……の繰り返しのように思います。

平野:薬の開発みたいですね。

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稲葉 :海という巨大な生命の実験場で、あらゆる生命が生まれてきた。そのなかで、心臓のようにドクドクとリズミカルに動き出した。その力が波動のように伝わった。そういうスタイルが結果として地球環境の中で都合良かったんでしょうね。

平野:心臓が大切だってことは直感でわかりますよね。なにせ中心にあるし。

稲葉 :もちろん脳もきわめて大切な部分ではありますけれど、心臓は「心の臓器」と表現することからも、歴史的に色んな意味合いが込められているような気がします。

平野:なにかあると真っ先に心臓がドキドキするしね。

稲葉 :「これがなかったら生きていけない」って本能的にわかりますよね。
自分が大学生の時から脳科学や脳ですべてを説明することは流行っていました。確かに、現代は養老先生がおっしゃるように脳化社会の産物です。ぼくは「動いている生命」に魅力やロマンを感じました。妊娠の時、脳よりも心臓が動いているのを見て、生きていると、いのちの存在を感じる。そうしたこともあって心臓を専門にしたんです。



次回は「螺旋のエネルギー」

②「宇宙の銀河の形も、植物の形も、竜巻も・・螺旋ですよね。」

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稲葉俊郎(いなば・としろう)

医師、東京大学医学部付属病院循環器内科助教。医学博士。1979年熊本生まれ。
心臓カテーテル治療、先天性心疾患が専門。在宅医療や山岳医療にも従事。
西洋医学だけではなく伝統医療、補完代替医療、民間医療も広く修める。
2011年の東日本大震災をきっかけに、新しい社会の創発のためにあらゆる分野との対話を始める。
単著『いのちを呼びさますもの』(アノニマ・スタジオ)、『ころころするからだ』(春秋社)など。
HP:https://www.toshiroinaba.com/

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