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Toshiro Inaba Talks ② " Avant Garde Medicine "

稲葉俊郎対談②「アヴァンギャルド医療」

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東京大学医学部付属病院循環器内科助教で心臓カテーテル治療、先天性心疾患、在宅医療、山岳医療が専門の稲葉俊郎さんとの対談です。
第2回目は「心臓のメカニズム」

〈前回までは〉
①「ぼくは『動いている生命』に魅力やロマンを感じました。」

「宇宙の銀河の形も、植物の形も、竜巻も・・・螺旋ですよね。」

平野:もうひとつ、小さい頃から疑問に思ってるんだけど、人間の身体って、基本的にシンメトリーにできているじゃないですか。それなのに、心臓は左に寄っているし、左にしかない。

稲葉 :はい。

平野:ふたつあるなら納得できるんです。ひとつダメになったときのためにもね。

稲葉 :肺はふたつありますからね。

平野:腎臓とか耳とか目もそうでしょ? 鼻の穴だって。

稲葉 :身体はもともと左右対称にできていますから。

平野:もともと?

稲葉 :胎児のときです。おぎゃーと生まれてくる前の話です。左右対称で真ん中にあった心臓が、左側だけが拡大していくから、左にあるように感じるんですよ。

平野:拡大? 移動じゃなくて?

稲葉 :移動しているわけじゃないんです。心臓は左と右に分かれますが、左側だけが全身に血液を送るために拡大していくんです。左側で心音が聞こえるし、拍動を感じるのは、拡大した左室が力強いので動きを感じやすくて音も聞こえやすいからなんですよ。ぼくは発生学を専門にしてますが、身体ができるとき、最初に左右を決めるスイッチが押されるんですよね。

平野:左右のスイッチが押される?

稲葉 :そうです。

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平野:なんでそんなことが? 生きていくうえで左右が大事だから?

稲葉 :すくなくとも人間にはそうですね。最初は左右対称だった身体が、右と左の軸が生まれることで非対称になります。だから最初にその信号が逆になると、身体の内臓が逆になったりします。「内臓錯位症候群」と言いますが。そういう方も外来でたくさん診ています。

平野:心臓が右に?

稲葉 :心臓が右に移動するわけではなくて、心臓の右側が拡大していくんですね。繊毛という毛のようなものがグルグル回転した波動で左右軸の信号を送るのですが、逆回転してまうと信号が逆になるんです。螺旋の回転運動が逆に回ってしまうと・・・

平野:螺旋?!

稲葉 :そうです。螺旋の回転運動が逆になると、一部の内臓は左右が逆になります。

平野:螺旋!! じつはね、この対談で語りあってきた多くの人から「螺旋」っていうワードが出てくるんですよ。
岡本作品の本質は螺旋だっていう人もいるし、「生命のはじまりはすべて螺旋の渦だ」っていう人もいる。けっきょく最後は「生命とは螺旋運動である」みたいな話になるんですけどね。

稲葉 :ぼくもそう思います。宇宙の銀河の形も、植物の形も、竜巻も・・・螺旋ですよね。

平野:銀河系も渦を巻いてますもんね。そういえば「渦を巻いている銀河にはいきものがいる可能性が高い」っていう人もいたな。

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稲葉 :『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』(岩波文庫)っていう本があって、水の研究の記述が多く書かれています。なぜダ・ヴィンチが水を研究していたかというと、滝壺もそうですが、水が流れ落ちるときに渦状に、水は螺旋の形になりますよね?

平野:はい。

稲葉 :水の螺旋同士がぶつかりあったときに生まれるエネルギーが、自然界の本質だろうと直感していたのでは、とぼくは受け取りました。

平野:なるほど。

稲葉 :螺旋がぶつかりあうことでエネルギーが増幅されていく。そこで生まれたエネルギーが創造の源になる。水を介してそのことを研究していたんじゃないかと。

平野:じっさいに医療に携わっていて、螺旋的な動きや形を意識する場面ってあります?

稲葉 :ありますね。生命の遺伝情報を運ぶDNAが螺旋なのは有名な話ですし・・・ぼくは人間の生命のありようを螺旋のイメージで捉えているんです。

平野:具体的にはどんな?

稲葉 :たとえば、ここに置いてあるコップは、力を加えていないので止まっています。だけど、右から強い力で引っ張り、同時に左からも強い力で引っ張っても、やはりおなじく止まって見えますよね。

平野:おなじ力で引っ張っていれば、とうぜん動きませんよね。

稲葉 :でも綱引きとおなじで、その内部には潜在的なエネルギーが隠れています。少し左右のバランスが崩れたらパーンとどちらかに飛んで行ってしまいますよね。

平野:はい。

稲葉 :生命とはそういうものではないかとぼくは考えています。人間の生きている命は、「生きる」という強いエネルギーと「死ぬ」という強いエネルギーが両側から引っ張りあいせめぎあっているんじゃないかと。その様子が螺旋の渦がぶつかりあうイメージと重なって見えるんですよね。滝や川の水流、水道の蛇口から出る水をぼんやり見ているだけでも思います。

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平野:そうか。ふだんは「生きる」エネルギーがわずかに勝っているから、寿命が尽きるまで回り続けていられる。でもじつは、常に逆のエネルギーも作用しているってことですね?

稲葉 :そうです。人間の生命の源は螺旋を描く渦状のエネルギーがぶつかりあっているんですよ。逆回転する渦が交わってエネルギーを打ち消しあったり、逆に増幅しあったり、その関係性を生きている限り続けているイメージがしっくりきます。

平野:うん、なんとなくわかります。

稲葉 :「死」って、ふだんは隠れていますけど、ある意味では生命の強いエネルギーだと思うんです。多くの人は生命が常に「死」へも引っ張られ続けているってことを忘れている。芸術は、その両方をこそ表現しようとするものですよね。だから、場合によっては芸術作品に死のイメージを強く感じることもある。

平野:なるほど。

稲葉 :だけどぼくは、それがむしろ生命の本質なのだと思う。「生きる」と「死ぬ」とがグイグイと拮抗してせめぎあっている。遠くから見るとそれはただの水の流れのように見えても、じつは螺旋の渦が入り乱れている。でも、生きている限り、誰もが少しだけ生きるほうへと引っ張られ続けている。だからこそ、いま生きているんです。



次回は「生命のバランス」

③「心の自然に反すると、バランスが崩れて病として表に顔を出す。」

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稲葉俊郎(いなば・としろう)

医師、東京大学医学部付属病院循環器内科助教。医学博士。1979年熊本生まれ。
心臓カテーテル治療、先天性心疾患が専門。在宅医療や山岳医療にも従事。
西洋医学だけではなく伝統医療、補完代替医療、民間医療も広く修める。
2011年の東日本大震災をきっかけに、新しい社会の創発のためにあらゆる分野との対話を始める。
単著『いのちを呼びさますもの』(アノニマ・スタジオ)、『ころころするからだ』(春秋社)など。
HP:https://www.toshiroinaba.com/

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