Repos

生命の樹の、その先、さらに向こうの世界へ。

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5億年後の生命体
河口洋一郎:beyond AI


2019 年 6 月 26 日(水)― 10 月 27 日(日)


「人類が存在しないかもしれない 5 億年後の未来を想像してみよう」
CG アーティストの草分けとして 70 年代から世界を舞台に活躍してきた河口洋一郎はそう言います。たんなる夢想ではありません。ここに展示されている「5 億年後の生命体」は、
いずれも形の発生、成長、進化をプログラミングし、一定の法則のもとに数学的にシミュレートされたもの。生きものが辿った 5 億年の歴史に学び、5 億年後の進化の姿を創造したものな
のです。
眼に飛び込んでくるのは、時間軸に沿ってうねりゆく〝螺旋の渦〟です。「渦を巻いていない宇宙に生きものはいない。生命のはじまりはぜんぶ渦なんだ」。そう語る河口さんは、自己増殖する「グロースモデル」を駆使して生命の誕生とエネルギーを表現しつづけてきました。
おなじように岡本太郎も生命の誕生とエネルギーを表現した作品を遺しています。1970 年の大阪万博の際に太陽の塔内部に設置した《生命の樹》です。40 億年にわたる〝生命の時間〟を造
形化したものですが、そこに描かれた進化の歴史はクロマニョン人まで。5 億年後のいのちを造形化しようとする河口さんの試みは、ある意味でこの《生命の樹》の続編といえるのかもし
れません。

岡本太郎記念館館長 平野暁臣

メインビジュアル

さあ、生命の爆発のカンブリア期から人類が 3 次元上に存在しないかもしれない 5 億年後の 4 次元未来を想像してみよう。
深海から宇宙まで、5 億年過去から 5 億年未来を時間のベクトルとして俯瞰し強烈なイメージを現在に映し出すのが、河口洋一郎のアート世界。
5 億年昔の太古のカンブリア紀の海にはクラゲが遊泳していた。その優雅な繰り返しの挙動は、リズミックで音楽的である。固着したイソギンャク、硬くなったヒトデ、トゲを持ったウニ、それらは、進化の過程でのサバイバルの仲間であり戦略のための形の変容を繰り返して姿を変えてきたのである。
アンモナイトの精緻な数学的等比級数は圧巻であり驚かされる。
翻って 5 億年彼方の未来へ時間のベクトルを進めたらどのような生命体が生まれているのだろうか?
未来型のアルゴリズミックな生物表現も時間の束を多層的にねじらせて超越する時間の造形として皆さんにお見せしている。「遊泳系」「歩行系」「飛翔系」の生命体の進化のインテリジェンスは、生物の生き残り戦略として、魅力的で興味が尽きない。
これまでに見たこともないような形状をアート作品として表現する為に私は CG プログラミングによる数理計算を用いた。
1976 年においては最先端だった白黒の線描画の動画から今日の豊かな色彩表現までの長い歩みは、昭和、平成、令和の技術の進歩と共にある。
私はアーティストであり、研究者だ。教授として沢山の教え子達と共に研究し、新しい表現の多様性を追求してきた。
国際学会や短期間の美術館の展示がほとんどであるから、私の作品を直に体験してくれた人は限られていると思う。
今回は 4 ヶ月間という、長い期間での作品展示ができることになった。夏休みを挟んで、ゆったりした時間を共有できると喜ばしい。限られたスペースではあるが、敬愛する岡本太郎と敏子さんの住まいであった当館は、有機的な体温が感じられる展示会場だ。
展覧会は 3 次元 CG 映像を中心にした応用の試みで、LED 造形、FRP による立体造形、ドローイングである。ご来場の皆さんには、是非、大いに多次元的なイマジネーションを働かせて頂きたい。
眼の前の作品に対峙する時、主体の人、客体の作品の境目を無くす意識を持ってもらえると嬉しい。
例えばモニター画面の中にミクロの自分が時空間にダイビングする感じ。
触覚、匂い、味覚すら感じ取って、次元を超えるイメージを試して欲しい。
そこはある人には宇宙空間で、別の人には細胞の中、時間が伸び縮みするタイムトンネルかもしれない。
様々に心や思考を自ら動かす事で、ダイナミックな時空間に入ってみてもらいたい。
五感や想像力の増幅は、装置無しでも体感可能であると実感する者がクリエイティブな思考を生み出せると、僕は思う。
身の回りの生き物の中にも 5 億年を生き抜いたインテリジェンスが有る。それは人類のサバイバルへ向けた、自然からの人類への知的な贈り物だと思う。アート作品に生命独自のインテリジェンスを統合することで、従来にない新しいものの見え方を身につけることになる。
VR・AR のその先、AI のさらに向こうの世界を常に考えていると、作品制作がますます楽しくなってくる。創造する感性を科学や技術と融合させる手法は、故郷のトロピカルな種子島の自然や歴史に育まれた点が大きいのかもしれない。
このところ深海と宇宙への旅の願望は、ますます強まり、とどまるところを知らない。
夢の実現に向けて、アートは未来の子供達に夢と希望を与える終わりのない旅である。

河口洋一郎(東京大学名誉教授 / アーティスト)

河口洋一郎プロフィール写真
河口洋一郎

東京大学名誉教授 / アーティスト
種子島生まれ。
1976 年 CG の黎明期より CG(コンピュータグラフィックス)によるプログラミング造形の研究に着手。数理アルゴリズムにより導き出された技術
手法による独自の作品群で世界的注目を集める。インタラクティブアート・ジェモーション(Gemotion)の研究作品は後に VR/AR への応用やプロジェ
クションマッピングの世界に多数の優秀な人材を送り出した。
ベネチアビエンナーレ ʻ95 日本館代表作家。またロレアル大賞など、国際賞のグランプリを 1980 年代から多数受賞。Siggraphʼ 10 でアーティストアワードを受賞。2018 年にはフランス BNN Prix Dʼ Honneur 栄誉賞、さらに Siggraph Academy 殿堂入りを果たす(アジア人初)。国内では、2013 年に紫綬褒章を受章。

■アーティストトーク「インテリジェントな生命体のアート ~Beyond AI~」が開催されました。
河口洋一郎さんとNTTインターコミュニケーション・センター主任学芸員の畠中実さんによるトークショーが岡本太郎記念館で開催されました。
河口さんの数学的にシュミレートされた生命体の五億年後の進化についてのトークに、会場は大いに 盛り上がりました。

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