Talks

COMA-CHI TALKS ③ “ Being I ”

COMA-CHI対談③「“I”であること」

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日本を牽引する女性ラッパーであるCOMA-CHIさんとの対談です。
第三回目は「アーティスト」

〈前回までは〉
①「わたしがはじめた頃は女性のラッパーってほとんどいなかったんです。」
②「『自分は女性の代弁をしなければいけないの?』って思い込んでしまって。」

「『このままじゃ音楽が嫌いになる! 情熱が死ぬ!』みたいな気分になったんです(笑)。」

平野:メジャーからリリースしていたときに「女性の代弁者であることを演じていた」っていうのは、具体的にはどういう状況だったんですか?

COMA-CHI:太郎さんの言う「いやったらしいもの」になっていたように思います。自分自身を俯瞰して、これは本来の自分じゃないけど、やるしかないっていう状況になって。もちろんそれが根本的に自分に向いていれば、つづけられたと思うんですけど……

平野:向いてなかった?

COMA-CHI:わたしがヒップホップをはじめたとき、自分のなかにある「なんだかわからないカオス」のはけ口としてあった音楽が、まるでちがうものになってしまって。なんて言ったらいいか……次第にいろいろなことのバランスが取れなくなっていったんです。

平野:ラップをはじめた頃は、自分のなかに湧き出てくるものを吐き出す、というシンプルな状況だったのに、それがだんだんと「あるべき自分」を演じせざるを得なくなったと。周囲の視線や期待が大きくなるにつれて。

COMA-CHI:もちろん、メジャーから出した作品のなかにも、そのとき純粋に考えていたことは入っているんですけど、それでもやっぱり、どんどんちがうレールを走っている感覚が強くなってきて……

平野:うん、わかる。ただそれって、もしかしたら、ビジネス的に見れば、よりビッグになるための道筋だったのかもしれないよね。

COMA-CHI:そうかもしれません。でもわたし、そのとき「これじゃダメだ!」と思って。「このままじゃ音楽が嫌いになる! 情熱が死ぬ!」みたいな気分になったんです(笑)。

平野:それもよくわかる。

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COMA-CHI:それに気づいて2年契約の2年でやめました。ちょうどそのときに東日本大震災が起きたんです。それでまた考えさせられて、最初にできた作品がこの『太陽を呼ぶ少年』なんです。自主レーベルで、お金も自分で払って。

平野:〝再起動一発目〟が、不思議なことに絵本だった。

COMA-CHI:そうなんです。まずストーリーが浮かんできちゃって(笑)。

平野:それをなんとか形にしたい。世の中に送り出したい。それだけを考えてアクションを起こしたわけだ。

COMA-CHI:ほんとうにこのときは、「これを表現したい、叫びたい」っていうのがまず先にあったんですよね。

平野:その瞬間、COMA-CHIさんは、それまでとはちがう種類の表現者になったのかもしれないね。自分のなかに湧きあがる問題意識を作品に結晶させ、それを世の中に問うことだけを考える〝アーティスト〟に。それまでの“エンターテイナー”とはベクトルの向きが少し変わったっていうか……

COMA-CHI:考えたことなかったけど、もしかしたらそうなのかもしれません。

平野:それまでは、「どれだけ自分の音楽が受け入れられるか」という基準で自身をコントロールしていた。でも新しいレイヤーにジャンプした瞬間に、自分の価値観や問題意識しか信じるものがないという世界に分け入った。

COMA-CHI:はい。

平野:つまり、それまでのように何枚売れたとか、数字で評価できる世界から、自分自身のなかにあるものを信じるしかない世界を選んだということです。

COMA-CHI:けっきょくわたし、数字の世界にいられなかったんですよね。「はじめた原点はなんだったのか」っていう感覚、「自分はこれがつくりたい、これが楽しい」という感覚でやっていたメジャーデビューの前に戻りたくて。

平野:うん。

COMA-CHI:メジャーに行ってみて、これは自分に向いている場所ではないと思ったんでしょうね、きっと。もちろんそれが向いている人もいっぱいいるけれど、わたしがやりたいことじゃない、と気がついたんです。



次回は「縄文のこころ」

④「太陽の塔のモチベーションは縄文だったということですか?」

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COMA-CHI

東京都出身のラッパー/歌手。
ロック・バンドやアコースティックギターの弾き語りなどから独学で音楽活動を開始。
15歳でヒップホップに傾倒し、2003年よりラッパーとして始動。
MCバトルで輝かしい戦績を残した後、メジャー・デビュー。
出産・育児期間を経て、2018年に5thアルバム『JOMON GREEN』をリリース。

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