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From the diary ⑨ "Resentment"

岡本太郎コラム⑨ 日記から「憤り」

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パリにはさまざまの用事があった。来年の展覧会の打ち合わせ。版画の制作。歌集の編集等々。今度ちょっと変わっているのは文筆家としての仕事だ。私の著作「美の呪力」がエディシオン・セゲールスから、この十月に出る。今まで手紙でやりとりして来たが、具体的なつめの段階。来たついでに、会って話しあった。

オフィスを訪ねると、社長、編集長など、はじめて出会うのだが、旧知のような親しみをこめて迎えてくれる。みんな鋭いが、もの静かで、チャーミングだ。

本文に一カ所だけ、はっきりしないところがある。貴方自身で訳してみてくれませんか、と頼まれた。原稿を見ると、第五章のトップである。翻訳者がその部分だけよくわからないまま訳しているらしい。原文は「はじめに怒りありき」という文句からはじまっている。神はそのあとに創られたのだという趣旨。

ヨーロッパ、いや大体世界中ほとんどどこでも「はじめに神ありき」だ。だからこんな突拍子もない文句をはじめて読んで、翻訳者はとまどったのだろう。

だが私は思う。まず人間は運命をこばむことによって生命を燃やす。自他への憤り、それが根源であり、やがて神に化身する。だから神はきびしいのだ。

ところがだんだん問題が逆になってくる。神でごまかしはじめるのだ。格好をつけて拝んで、責任を回避する。卑しい。

「こんな考え方はキリスト教国では解らないんじゃありませんか。」と聞いたら、

「いや、いいです。こういう哲学をこそ、フランス人に読ませたいのだ」と嬉(うれ)しそうに笑った。

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