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Think ① "The Love Bell Movement"

岡本太郎コラム① 思うこと「『愛の鐘』運動」

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「愛の鐘」という名前からしてひどく少女趣味の運動が、母親の団体を中心として、近ごろ全国的に広がりつつある。メーカーの売り込みも推進力になっているらしいが。ウエストミンスター・チャイムとか、アイルランドやスコットランド民謡の一節、トロイメライなんていう、甘いセンチメンタリズムを、夜九時とか十時とか、時間を決めて拡声器で流す仕掛け。青少年不良化防止策だそうだが、まことにナンセンスだ。

統計によると補導された非行少年の数は、鐘をつけた地区でふえこそすれ、減ってはいないという。

“夕焼け小焼けで日が暮れて、山のお寺の鐘が鳴る”とお手々つないでわが家に帰った伝統だから、効果があるという人もある。たしかに昔はお寺の鐘の音が一日の終わりだったろう。だが、今日の九時、十時の鳴りものなんて、「さあ、そろそろ出かけようか」という合図にさえなりかねない。

第一、ここには論理の矛盾がある。

こんな甘いメロディーにほろっとして、里心がつく感傷的な若者だったら、反対の方向にだってすぐ引きずられる。それを同じメカニズムなのだ。まして街にあふれる刺激的なロカビリーやファンキー・ジャズ、お母さん達は悪のメロディーというかもしれないが、この方がはるかに魅力的だ。若い肉体のリズムに同質なのだ。

若い者を泣き落としにかけようというのは、新しい浪花節だ。戦争前後、さかんに用いられた手だが、結果はご承知のとおり。こういう指導法はむしろ不潔だと思う。古いお母さんの不潔さだ。現実的な問題で子供の力になる自信がないので、鐘でも鳴らして、何かしてやっているような気になる。責任のがれである。形式主義で片づく問題でないことは、本当は解っているのだろう。だが、お母さん達も多勢よって組織になると、何かかっこうだけつけて安心する官僚根性になってしまうのだろうか。

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