ロックバンドTHEATRE BROOKのボーカル、ギタリストであり、すべてソーラー電気だけで開催する野外ロックフェス「中津川THE SOLAR BUDOKAN」の主宰、佐藤タイジさんとの対談です。
第3回目は「ギターを弾きたい」。
〈前回までは〉
①「だから『オレ、ポールが弾いているベースをやる!』って言ったんだけど――」
②「あれもこれも好きだから、あれにもこれにもなってみたいけど、こっちも好きだから、こっちにもなってみたい……みたいな。」
「オレは上手に弾きたいわけじゃなくて、『ギターを弾きたいんだ!』っていう感じなんですよ、うまく言えないけど。」
平野:タイジさんが大学生になったころに、バンドのみんなで徳島から東京に出てきた。でも東京に来たからといって、すぐにプロになれるわけじゃない。
佐藤:もちろんです。まだまだアマチュアでした。
平野:そこからどうやって?
佐藤:とにかくライブをつづけていたんです。そのうち、80年代の後半になると、いわゆるインディーズのレーベルがけっこう出てきたんですよね。
平野:へえ。
佐藤:徳島にいるころは知らなかったんだけど、ヘンテコなオヤジがやっているロック喫茶があって、ニューウェーブ系、パンク系のバンドを呼んでライブをやっていたんですね。
平野:徳島で?
佐藤:そうです。そのオヤジが「東京でインディーズのレーベルをやる!」と。オレたちが東京に来たのとほぼおなじタイミングで。
平野:東京進出だ。
佐藤:いわゆるパンクのレーベルをつくって、知る人ぞ知る有名なハードコアパンクの、リップクリーム、ガーゼ、SOB……その辺をまとめてやり出したんです。
平野:そこにTHEATRE BROOKも入れてもらえたわけだ。
佐藤:そうです。それでライブも、仕事もやりつづけつつ……
平野:少しずつ売れていった?
佐藤:いまでも覚えているのは、もう無くなっちゃったんですけど、新宿にJAMっていうライブハウスがあって――
平野:ロック系のハコ?
佐藤:そうです。そこでTHEATRE BROOKのライブをやっているときに、お客さんの女の子が踊り出した日があったんですよ。「もう踊っちゃう!」みたいな感じで。
平野:うん。
佐藤:その日、終わったあとの楽屋でメンバーと、「今日、お客さん、踊ってくれたよな? やったぜー!!」って興奮して。そのときのことはいまでも忘れられないですね。やっぱりオレ、踊って欲しいんですよ。
平野:地元の小さなライブハウスで演っていたら、たまたま東京の敏腕プロデューサーが見ていてメジャーデビューへの階段を駆け上がった、みたいシンデレラ・ストーリーじゃないんだね。
佐藤:ぜんぜんそうじゃないです(笑)。ほんとに少しずつ、地道に、地道に。
平野:うん。
佐藤:あっ、思い出した!
平野:え、なに?(笑)
佐藤:さっきのパンクレーベルから音源を出したときに、有名なプロデューサーの方が目をつけてくれたんですね。でもオレ、そのころ超生意気だったんで――
平野:うん(笑)。
佐藤:まだ22、3歳のころです。「プロデュース? 冗談じゃない。オレは自分の力でやる。他人の力なんか借りねえよ」みたいな感じで。いやー、いま考えると超恥ずかしい!
平野:いい話だな。絵に描いたような「若気の至り」だ(笑)。
佐藤:まさしく!(笑)
平野:ただね、もしかしたら、もしそうじゃなかったら、いまこうなってなかったかもしれませんよ。最初から「それはそれは、ありがとうございます! なにをさせていただけばよろしいでしょうか?」なんて手揉みするようなヤツじゃね。
佐藤:まあ、でも、さすがに気になって考えたことありますよ。
平野:なんであんなに生意気だったのかって?(笑)
佐藤:そう。
平野:で、答えは出ました?
佐藤:やっぱりオレ、必要以上にギターに自信があったんじゃないかと。
平野:ああ、なるほど。
佐藤:べつに指が早く動くわけでもないんだけど――
平野:タイジさんのギターって、強烈な個性があるでしょ? なんて言ったらいいかうまく説明できないけど、
技術だけでは獲得できない独特のテイストっていうか……。そう、「これが佐藤タイジだ!」っていう匂い、ある種の〝臭さ〟を感じるんですよ。
佐藤:それは嬉しいな。
平野:そういう〝体臭〟を感じるギタリストって、そんなにいるわけじゃない。テクニックのある人はごまんといるけど、「あっ、この匂い!」っていう強烈な存在感を打ち出せるギタリストは少数です。タイジさんのギターにはそれがある。
佐藤:オレ自身、そういうギターが好きなんですよね。たとえばジミ・ヘンドリックス。
平野:うん。
佐藤:でもいちばんわかりやすく衝撃を受けたのはニール・ヤングです。
平野:あ、そうなの? でも言われてみると、なんとなくわかる気もするな。
佐藤:あれがオレの理想です。あとはルー・リードもいいですね。
平野:ともにバカテクの真逆だ。
佐藤:〝味わい〟っていうか――オレは上手に弾きたいわけじゃなくて、「ギターを弾きたいんだ!」っていう感じなんですよ、うまく言えないけど。
平野:うん、わかる。
佐藤:ニール・ヤングをフジロックフェスティバルではじめて見て、もう強烈に衝撃を受けましたね。
平野:ほかのだれかと比べようがないもんね。
佐藤:そこなんです。彼がギターでやっていることが、まさしく臭うギターですよね。
—
次回は「混ぜる」。

佐藤タイジ
徳島県出身。ギターボーカル日本代表。
太陽光発電システムによるロックフェス
「THE SOLAR BUDOKAN(since 2012)」の主宰者。
日本の音楽界と再生エネルギー界を牽引する稀有なモジャモジャ頭。
「ロックスター」「ファンキー最高責任者」は彼の代名詞。
’86、シアターブルック結成。
’91、RedHotChili Peppersのフロントアクト。
’95、EPICからデビュー。「ありったけの愛」がJ-WAVE.FM802など主要FM局でヘビーローテーション。
ちなみに太陽の愛を歌ったこの曲を歌い続けたことが
「THE SOLAR BUDOKAN」のアイデアの源泉。
この他、クラブ系ユニット「The SunPaulo」ではエレクトロ。
加山雄三率いる「The KingAllStars」では主要メンバー。
そして高円寺阿波おどりとのコラボ「佐藤タイジ&華純連」は日本の音楽史の転換点となる壮大なプロジェクト。楽曲「踊らなソンソン」はiTunes.Spotifyなどで絶賛配信中。
佐藤タイジは間違いなく日本代表ロックスターなのだ!
■佐藤タイジ HP
http://www.taijinho.com/
■シアターブルック HP
http://www.theatrebrook.com/
■THE SOLAR BUDOKAN HP
http://solarbudokan.com/
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