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佐藤タイジ対談⑧「オレの〝踊り方〟」

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ロックバンドTHEATRE BROOKのボーカル、ギタリストであり、すべてソーラー電気だけで開催する野外ロックフェス「中津川THE SOLAR BUDOKAN」の主宰、佐藤タイジさんとの対談です。
第8回目は「過剰な無駄遣い」。

〈前回までは〉
①「だから『オレ、ポールが弾いているベースをやる!』って言ったんだけど――」
②「あれもこれも好きだから、あれにもこれにもなってみたいけど、こっちも好きだから、こっちにもなってみたい……みたいな。」
「オレは上手に弾きたいわけじゃなくて、『ギターを弾きたいんだ!』っていう感じなんですよ、うまく言えないけど。」
④「混ぜ混ぜするものが好きなのか? 食べ物も冷奴とご飯を混ぜるのが大好きだし。」
⑤けっきょく思ってもいないことを無理矢理やったところで、いい結果にはならないし、伝わりませんからね。
⑥「踊れるのが好き。踊れる音楽が聴きたい。どんなものであれ踊れるのが好き」
⑦「『それならソーラーエネルギーでやればいいじゃないか』っていうアイデアが浮んできた。」

「『たぶんオレは死んでるんだな』って思うんですよ。これはもう死後の世界にちがいないと。」

平野:「THE SOLAR BUDOKAN」が成功したあと、会場が中津川に移るわけですけど、それはどうして?

佐藤:最初の武道館に協力してくれた会社の本拠地が中津川だったんです。

平野:ああ、それで「うちでやらないか?」って言ってくれたわけだ。

佐藤:そうです。それに、なんといっても中津川はフォークジャンボリーをやっていた場所ですからね。

平野:日本的フェス発祥の――。

佐藤:知らなかったんですけど、フォークジャンボリーって、ウッドストックの一週間前なんですよね。

平野:それじゃ、もしかしたら世界最古のフェスかもしれないんだ。

佐藤:そうなんです。

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平野:でも武道館はロックミュージシャンにとっての憧れの聖地でしょ? そこを離れて田舎に行くわけだから、それに代わるメリット、あるいはモチベーションをかき立てるなにかがない限り、武道館のほうがいいって話になるじゃないですか。にもかかわらず中津川に行ったのは、なにか新しい可能性を感じたからですよね?

佐藤:野外だからです。

平野:あ、そうか。

佐藤:単純に、フェスは野外のほうが楽しいし、ソーラーなので昼間からやったほうがいい、っていうのもあって。

平野:なるほど。そりゃそうだ。

佐藤:武道館サイドから「武道館って名前を出していいですよ」と許諾もいただけたので、なんの曇りもなく中津川に行きました。

平野:もう7回目なんですよね?

佐藤:そう。武道館から数えると8回目です。おかげさまでぜんぶ晴れてるんですよ。

平野:今年の中津川を見せてもらいました。

佐藤:遠いところ、ありがとうございました。

平野:いやいや、とんでもないです。あまり時間が取れなくて、オープニングのTHEATRE BROOKと田島貴男さん(ORIGINAL LOVE)だけを見て帰らなければならなかったんだけど、メッチャ楽しかった。

佐藤:イェ〜イ!

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平野:(笑) でね、見ているうちに三つのことが頭をよぎったんですよ。このフェスがぼくに与えたインパクトっていうか――。

佐藤:ぜひ聞きたい!

平野:ラインナップを見ると、とにかくものすごい数のミュージシャンが入ってるじゃないですか。

佐藤:はい。

平野:ひとつ目は、そうした「徹底した過剰さ」です。

佐藤:過剰?(笑)

平野:合理的な集客や経営効率を考えるなら、おそらくあれほどの数は必要ない。プログラムをもっと減らしても、たぶん集客数はそう変わりませんよ。

佐藤:そうでしょうね。

平野:要するに過剰なんですよ。さらに言えば、いい意味での「音楽的エネルギーの無駄遣い」です。

佐藤:無駄遣い!(爆笑)

平野:でもね、ぼくはそこに痺れた。なぜなら、そうであるがゆえにあのフェスが「祭り」になっているからです。

佐藤:おー!

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平野:年に1回、非日常のステージに立つ瞬間が祭りです。たらふくご馳走を食べ、日常の常識や規範、日ごろのしがらみや上下関係から自由になって、無礼講に遊ぶ。真面目に働いて社会を支えている大衆が、羽目を外して精神を解放するわけですね。そのとき大切なのが「蕩尽」です。毎日コツコツと貯めてきた蓄えを、思い切って散財するんです。

佐藤:蕩尽か……。

平野:リオのカーニバルでは1年の稼ぎを一晩で使う、とよく言われるけれど、そうやって精神の均衡をキープしているわけですよね。「無駄遣い」をしなければ祭りにならないんですよ。じっさい「節約に節約を重ね、無駄を排した地道で合理的な祭り」なんて、行く気がしないでしょ?

佐藤:たしかに!(笑)

平野:だから中津川の〝過剰な無駄遣い〟を見て、「これは祭りだ」と思ったわけ。

佐藤:ありがとうございます。

平野:二つ目は、「共同体意識」みたいなこと。ぼくはあまりロックフェスには行かないから、とても新鮮でした。
THEATRE BROOKの開演を待っていたら、まわりの客が、「一年ぶりに会えたね! 元気だった?」なんて言いながら、嬉しそうにハグしているんですよ。あのフェスがある種のコミュニティをつくっているってことです。

佐藤:うん。

平野:こどもたちにギターのボディに好きなように色を塗らせるっていう企画もおもしろかった。

佐藤:やってましたね。

平野:こどもたちがとても楽しそうにやっていたし、家族がみんなで楽しめるように配慮されていました。

佐藤:はい。

平野:そういう眼差しみたいなことを含めて、あのフェスを一年間待ってくれている人たちを包み込む共同体意識みたいなものを、おそらくそれぞれの観客が感じている。それがある種の快楽になっている。そういうふうに見えたんです。

佐藤:嬉しいなあ。

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平野:家族で楽しめるように、っていうことでいえば、今年の東京モーターショーがそうでした。従来はクルマ好きのためのイベントだったわけだけど、それでは立ち行かなくなったということでしょう。こどものうちからクルマに親しみをもってもらわないと先がないという焦燥感がにじみ出ていました。いずれにしろ、すべてはクルマを売るための戦略を理詰めで考えた結果です。

佐藤:なるほど。

平野:自動車メーカーはこの構造問題を変えようと必死です。それこそ四駆を売るために悪路走行コースをつくったりするわけです。「四駆を買っても走るところがない」っていう矛盾を解消するためにね。でもそれは30兆円企業が考える話であって、このフェスがそれとおなじロジックでつくられているわけがない。つまり、新譜のCDを売るプロモーションとして考えられたものであるはずがない。だって、CDの売り上げを伸ばすためにあれだけの規模の、あれほどのことをやることに合理性なんてないもんね。そう考えると説明不能なわけですよ。

佐藤:まったくそのとおりでございます(笑)。

平野:つまり、単純に「このフェスはなぜ存在しているのか?」が不思議だったわけ。「首謀者であるタイジさんの動機はいったい何なんだ?」と。

佐藤:なにせ「過剰な無駄遣い」ですから(笑)。

平野:そこがとても不思議だった。
3.11があって、原発の問題があって、だからクリーンエネルギーで行きましょう、みたいな話だけが動機になっているとは到底思えない。つまり、そういうことを演説したいがためにあのフェスを運営しているとは思えないんですよ。

佐藤:ああ、なるほど。そんなふうに考えたことなかったな。

平野:だって、基本的には無駄遣いだからね。

佐藤:超絶な無駄遣い!(笑)

平野:だって、そうだから(笑)。

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佐藤:毎年やっていて、「たぶんオレは死んでるんだな」って思うんですよ。これはもう死後の世界にちがいないと。

平野:極楽だから? 極楽浄土ってこと?

佐藤:そう。いまこんな極楽浄土にいるってことは、きっとどこかで死んだんだろうって。要するに、アレがオレにとっての極楽浄土なんですよ。

平野:なるほど、そうか。そういうことならわかる。「オレの極楽をつくっているだ」っていう話はじつに説得力があるからね。

佐藤:それにしても「過剰な無駄遣い」っていいですね。今度から使わせてもらいます(笑)。



次回は最終回。
「ワクワクしていたい」。

⑨「でもオレの夢はそっちじゃなくて、世界中でおなじこと考えている人とネットワークができたらいいなって。」

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佐藤タイジ

徳島県出身。ギターボーカル日本代表。
太陽光発電システムによるロックフェス
「THE SOLAR BUDOKAN(since 2012)」の主宰者。
日本の音楽界と再生エネルギー界を牽引する稀有なモジャモジャ頭。
「ロックスター」「ファンキー最高責任者」は彼の代名詞。
’86、シアターブルック結成。
’91、RedHotChili Peppersのフロントアクト。
’95、EPICからデビュー。「ありったけの愛」がJ-WAVE.FM802など主要FM局でヘビーローテーション。
ちなみに太陽の愛を歌ったこの曲を歌い続けたことが
「THE SOLAR BUDOKAN」のアイデアの源泉。
この他、クラブ系ユニット「The SunPaulo」ではエレクトロ。
加山雄三率いる「The KingAllStars」では主要メンバー。
そして高円寺阿波おどりとのコラボ「佐藤タイジ&華純連」は日本の音楽史の転換点となる壮大なプロジェクト。楽曲「踊らなソンソン」はiTunes.Spotifyなどで絶賛配信中。
佐藤タイジは間違いなく日本代表ロックスターなのだ!
■佐藤タイジ HP
http://www.taijinho.com/
■シアターブルック HP
http://www.theatrebrook.com/
■THE SOLAR BUDOKAN HP
http://solarbudokan.com/

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