約12年ぶりに復活したゴジラシリーズ『シン・ゴジラ』で監督・特技監督(兼任)の樋口真嗣氏との対談です!
※この対談は『シン・ゴジラ』公開前の2016年2月29日(月)に収録したものです。
〈前回までは〉
樋口真嗣①「ほんとうに暮らしていた場所って、やっぱり孕んでいる気配がちがいますね。」
樋口真嗣②「でもね、「なんでオレ、監督になっちゃったんだろう?」って、いまだによくわらかないんです。」
樋口真嗣③「自分が何気なく言った一言が、180度ズレていたことがあって。」
樋口真嗣④「エッジの立ってる人ってほんとうに早いんですよね。」
樋口真嗣⑤「言っちゃえば「政治」になっていくわけです。」
樋口真嗣⑥「だって「亀」ですからね。」
樋口真嗣⑦「こどもの頃にそれを見た我々は縄文じゃなくて未来を感じちゃった。」
樋口真嗣⑧「眼が光るって日本ならではというかガラパゴスなんですよね。」
いよいよ最終回。
「想像力の鍛え方」ついてお伺いします。
「現実の中に非現実が現れた衝撃が忘れられないんですよ。」
平野:そういえば、スターウォーズの最新作を見たとき、どことなくアナログっぽいにおいがしたんですよ。
樋口:そうですね。
平野:もしかして、いまパラダイムシフトが起きつつあるってことですか?
樋口:戻ってるんです。世の中、全体的にCGが行きすぎちゃって。
平野:でも、CG を見慣れたから着ぐるみが新鮮に見えるっていう単純な話じゃないでしょ?
樋口:けっきょくは驚きがあるかどうか。新しいスターウォーズに出てくる玉みたいなロボット、あれCGじゃないんです。中に仕掛けが入っていて。
平野:あっ、そうなんだ!
樋口:じっさいリアルにあるもので、それがちゃんと動いてるってことが、逆に新鮮なんです。

平野:どんなに緻密なCGをつくっても、そうたいして驚いてくれない時代になったっていうこと?
樋口:CGはね、どんなに工夫や努力をしもしても、それがなかなか伝わりにくいんです。
平野:たしかにコンピューターが自動生成してくれてますっていう感じ、ありますもんね。
樋口:必要なのは見てくれる人の心を動かすってことなんで、昔ながらの方法で心を動かすことができるなら、それでいいじゃないかっていう。
平野:なるほど。いずれにしても、特撮であれCGであれ、樋口さんがつくられてきた映画って、誰も見たことがない世界じゃないですか。
樋口:はい。
平野:怪獣が建物を踏みつぶしながら街を練り歩くシーンをじっさいに見たヤツはいない。
樋口:(笑)
平野:とはいえ、観客側にはある種の期待がある。怪獣が街に上陸したときにはこんなふうであって欲しいというイメージっていうか…。建物を壊さないように気を使いながら幹線道路を直進されたのでは困る(笑)。やっぱりコンビナートを派手に壊して火の手があがってくれないとリアリティを感じないわけです。でも反対に、期待どおりっていうだけじゃ驚きがない。
樋口:そうですね。
平野:そのあたりのサジ加減をどうするかがいちばんのポイントじゃないかって、想像してました。
樋口:それで言うと、「期待に応えて予想を裏切る」っていうことですね。逆でもいいです。「予想を裏切って期待に応える」。
平野:なるほど。

樋口:やっぱり期待には応えなければいけない。ハードルは越えなければならないけど、その先の予想は絶対に裏切らないといけない。
平野:それを意識的にやっている…。
樋口:はい。ボクも別にブッ飛んだ育ちかたをしたわけではないので、平凡なことしか思いつかない。だから思いついたことを並べて、それを壊して、逆説的にどう考えていくかですね、
平野:そうやって自分を追い込んでいくわけですね。
樋口:そうですね。
平野:映画監督って、そういう綱渡りみたいなことをしなければならないんだ。樋口さん、そういうことができる能力や想像力って、どうやって鍛えたんですか?
樋口:やっと来た! その一言を言うために今日はここに来たんです!
平野:(笑)
樋口:太郎さんのせいです!

平野:(爆笑)
樋口:こどものころに体験した、現実の中に非現実が現れた衝撃が忘れられないんですよ。
平野:うん。
樋口:だから鍛えたとかじゃないんです。あのときあれを見ちゃった!っていう。
たとえば幼稚園のときに太郎さんの飛行船を見ちゃったんですよ。
平野:えっ、実際に? いいなー、ぼくは見たことない。
樋口:軒先からあの目玉がニュッて。わかります? あの衝撃。あれでね、ボクの中にあるなにかを破壊されて…。ボクはいまだにあの衝撃を追い続けているのかもしれないです。
平野:そのインパクトって、樋口さんの中ではきっと怪獣を目撃したような衝撃だったんですね。
樋口:そう、だから太郎さんのせいなんです(笑)。
平野:こどものときに見たっていうのは決定的ですよね
樋口:なんの予備知識もありませんでしたからね。
平野:いやー、今日はほんとうにありがとうございました! 超絶おもしろかった。
樋口:この場です。なんかわからないけど、この場だから話せました。ありがとうございました!
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樋口真嗣
1965年東京都出身。
1984年「ゴジラ」で怪獣造形に携わることで映画界入り。
1995年には特技監督を務めた「ガメラ 大怪獣空中決戦」で日本アカデミー賞特別賞特殊技術賞を受賞。
監督作品に『ローレライ』、『日本沈没』、『のぼうの城』、実写版『進撃の巨人』など。
2016年公開の『シン・ゴジラ』では監督と特技監督を務める。