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『日本再発見 芸術風土記』から本文を一部抜粋!!

1957-46歳 芸術風土記取材 徳島

■『日本再発見』抜粋2 「京都」より (PP. 81)

たしかに京都は日本の最も美しい町であるに違いない。
東京、大阪のあの醜悪さにくらべれば、ここはまさに千年の香気がただよっている。
たとえ貧しい屋なみでも、しっとりと揃って気格がある。

(……)

タチマチにおちいる一種の陶酔感。
私は「日本の伝統」で、こういう〝古都の魔術〞について書いたが、
現実から浮いて抵抗がない、それだけならまことに心地よい気分である。

いつも、駅に着くと祇園富永町の親しい女性に電話する。
といっても、決して色っぽい間柄じゃない。
それなのに、受話器を伝わって、つやつやとなめらか、
品よく甘い京都弁が流れこぼれてくると、もうイケマセン。
とたんに身体じゅうがとろとろっととろけて、
全身電話機にぶら下がったシズクみたいになってしまうのである。

いよいよもって非現実の世界だ。
なにしろ千年のミガキがかかっている。
一ことだけでノーサツしてしまう。これもこの都の魔術である。

真に不思議な気分。化かされんなよ、と自分に言って聞かせる。

よく京女は芯がつめたいなんて言う。
残念ながら、いまだ身をもって確かめたことはないが。
町にはその気配がある。
表面の優美さ、形式の洗練、当りのやわらかさに、
うっかり甘い気分でいると、案外、現実主義的計算があり、
かんじんのところでピシャリとしめ出されそうな感じがしないではない。
といってもそれはまた決して逞しく現実的ではなく、ひどく空虚なんじゃないか。

いずれにしても、京都に滞在している間、
じわじわと感じとる気分は現実感の喪失である。
これは旅行者であるという意味ばかりでは決してないと思うのだが。

だが、われわれはこの町に来る。
過去の最も充実した文化の気配が魅力だからだ。

(……)

(3ページ目に続きます)

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