続いては椹木野衣さんの審査評です。
「 こんなコンペティションの審査をするのは初めてなので、
いったいどうなることかとやや不安な気持ちを抱きながら
一次審査の会場に向かった。
しかしそんな不安はまったくの杞憂で、
応募作はどれも予想以上のおもしろさ。
けっこう悩みつつ、でもそんなに手間取ることもなく絞り込むことができた。
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しかし紙のうえのプランはプランでしかない。
最終審査は模型提出で、しかも本人によるプレゼン付きで、
選考の過程は来場者の前ですべて公開
(ブログでは文字による実況も同時進行)だ。
しかし、これが一次審査に輪をかけてスリリングだった。
プランや模型だけでなく、応募者の語り口、攻め方、演出など、
すべてが選考の材料になる。
曲がりなりにも太陽の塔に対峙しようと言うのだから、
すべてがその対象になるのは言うまでもない。
こちらからの応答も、通り一遍等では済まされない。
そんなことを聞かれるなんて思ってもいなかった、
という質問に即座に対応できてこそ、「対峙」にはふさわしい。
そんななか、最優秀賞に輝いた山田文宏チームは、
「無意味、かつ緻密」という点で、他に頭ひとつ抜きん出た。

そもそも「太陽の塔」そのものが、無意味、かつ緻密の極北にある。
両者の混じり合わぬ対極のぶつかりあいこそが最大の魅力なのだ。
その点、山田チームは塔に対峙できたかはさておき、
少なくとも真正面から挑むことには成功している。
特別賞を獲得した大坪良樹のプランも、
「太陽の塔」を大阪万博のガン細胞に見立て、ほかのすべてが消えたあと、
その無際限な増殖がついには自己へと向かったという設定は、
なかなかのものだった。

しかしそれにしては模型がすっきりとしすぎていて、
塔のガン化を視覚化するまでには至らなかった。
バイオマスなどの社会的妥当性を盛り込むのも、ガン化にはそぐうまい。
「太陽の塔」が涙を流しながらオレンジ・ソーダのゲロを吐き続ける
中村宏大プラン、金色の顔部分をパラボラに見立て、「ヤッホー!」を叫びつつ
爆発するやもしれぬ宮崎宏康プランも、特別賞に肉薄するものだったが、
前者は細部の詰め、後者は塔との結びつきがやや弱かった。


中村は、大胆な案だからこそ細部を詰める「無意味、かつ緻密」に足りなかったし、
宮崎は自己の欲望を追うあまり、塔との対峙が薄くなってしまったのが少々物足りない。
伊勢原宥一、駒村佳和/田中みずき、山田栞によるプランも、
最終選考に残ったのだから、むろんどれも魅力的なのだが、
伊勢原は発表の形式にこだわるあまり細部の魅力に乏しく、
駒村/田中は「穴」や「瞬間」と具体的なプロジェクトとの溝が残り、
山田は太陽の「根っこ」というよりは「切り株」だったと思う。
今後、さらに研鑽されたし。」
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