モンスターパニック漫画『ハカイジュウ』 が大好評連載中の漫画家・本田真吾さんとの対談です!
〈前回までは〉
本田真吾①「実際に目の前で見たとき、本当に感動したんです」
本田真吾②「太陽の塔の違和感って、ものすごいですもんね」
今回は「ハカイジュウ」ヒットの秘密についてお聞きします。
ダメだったら速攻で終わらせる覚悟で(笑)
平野:PLAY TAROを見てくれている人の中にもたくさんのファンがいると思うけど、《ハカイジュウ》はなぜヒットしたと思われます?
本田:うーん、そうですね。最近の漫画って、すぐアニメ化されたりするじゃないですか?
平野:はい。
本田:そういう風潮もあるし、そこを狙っていく漫画ももちろんあるわけですけど…。
平野:戦略としてね。
本田:でも、《ハカイジュウ》をはじめるときに最初に考えたのは、あまりにすごすぎて映像化できないようなもの、邦画では絶対に映画化できないような漫画をつくりたいということでした。
平野:おもしろいなあ。
本田:だから、それこそ採算度外視ではじめたんです。売れるかどうかわからないものだったので。
平野:採算度外視?
本田:いきなりたくさんの人員を投じて。
平野:アシスタントってことですか?
本田:そうです。スタッフをたくさん使って、最初の数ヶ月は超赤字でした。貯金を切り崩しながら、描いていましたね。
平野:もしダメだったらどうするつもりだったんです?
本田:ダメだったら速攻で終わらせる覚悟で(笑)。それくらいの熱量でやったのが読者にも伝わったのかな、っていう感じです。
平野:《ハカイジュウ》の世界観がそれまでにないものであり、しかもその世界観がものすごくエキサイティングだったから、読み手の心を掴んだわけでしょう?
本田:そうだと嬉しいですね。
![24443[2]](https://playtaro.com/wp-content/uploads/2016/06/244432-348x500.jpg)
本田:もともとハリウッド映画には巨大モンスターが暴れまわるような映画があって…
平野:《ゴジラ》みたいな?
本田:そうですね。《ゴジラ》に近い感じです。それをハリウッドで撮ったような映画があって…
平野:えっ、でもぜんぜん違うでしょ? 《ハカイジュウ》とは。
本田:そうなんです。やってみたら、ぜんぜん違っちゃって…
平野:(爆笑)
本田:最初はハリウッドテイストのものを日本の背景でやれば、自分の知っている土地が壊れていくわけだから、読んでくれる人が興奮するんじゃないかと思ったんですよ。でもけっきょく、はじめてみたら「なにかに似たもの」にはならなかったんです。
平野:「なにかに似たもの」にならなかったってことは、要するに本田真吾的なものになったということじゃないですか。ただ、その「本田真吾的なもの」は、自分で意識的・戦略的に構築したものではないということですよね?
本田:考えたこともないです。
平野:ということは、本田さんの身体の中にあったものが吐き出されたってことでしょう?
本田:そうなのかも…。うーん、自分ではよくわかんないなあ。
平野:それってなんでしょうね? 身体の中にいろんなものが溜まっていたはずだけど…、なにが溜まってたんですか?
本田:なんでしょうね。漫画なり映画なり…
平野:漫画好き、映画好きの少年は山のようにいるけど、だからといって《ハカイジュウ》の世界観は生まれてこないでしょ?
…もしかして、なにか特別なトレーニングとか?
本田:してないです!(笑)
平野:あるいは特殊な経験とか、されてます?
本田:されてない!されてないです!(笑)
平野:不思議だなあ。どういうメカニズムになってるんだろうなあ。
本田:(笑)

平野:もうひとつ、前から不思議に思っていることがあって。ふつうストーリー性のあるものを構築するときって、最初に全体構成を考えますよね。スタートとゴールのイメージがあって、その間の物語をどう組み立てるかのおおよその目処をつけてから具体的な作業に取りかかる。小説であれ映画であれ、プレゼンであれ学術論文であれ、みんなそうです。
本田:そうですね。ゴール目指して山あり谷ありの物語を描いていく。
平野:でも漫画の連載って、いつ終わるかわからないんでしょ?
本田:そうです。
平野:ということは、あらかじめ全体の枠組みを決めることができないし、ゴールも見えないってことですよね?
本田:見えないです。
平野:それがすごく不思議っていうか、おもしろいと思っていて。じっさいどうやってるんですか? テレビドラマみたいに全13話とわかっていれば、いろいろ計算できますけど…。漫画は出たとこ勝負みたいな感じなんですか?
本田:ぼんやりとしたゴール地点は定めておいて…
平野:でもいつ終わるかわからないんでしょ?(笑)
本田:そうなんです(笑)。でもこの漫画の場合は、あんまり長く続けていると飽きちゃうかもしれないから、当初はそんなに長くないところで終わらせようっていうのがあって…
平野:でも18巻ってじゅうぶん長いじゃないですか。
本田:じつは第一部が13巻で終わってまして。ほんとうはそこで…
平野:終わるはずだった?
本田:でも「もうちょっとできるんじゃないか?」って思っちゃって(笑)。
平野:なるほど(笑)。
本田:それで第二部がスタートしたんです。
平野:そのおかげで太陽の塔が登場したわけですもんね。続いてよかった。
本田:なので、逆にいえば、終わりが見えないのが漫画の強みでもあるんですよね。
平野:それにしても、毎号毎号、話を先に進めていかなくちゃならないわけで、とりあえず二〜三ヶ月分を考えるにしても、じっさいどうやって話をつないでるんですか?
本田:…そのときになったら絞り出します。
平野:(爆笑)
本田:ぼくの場合は直前になるまで決まってないというか…。ひとつ決めているのは、《ハカイジュウ》については、伏線を張って回収したりするような漫画にはしないということ。
平野:脳みそで満足させるのではなく、画面のインパクトで勝負したいってことですね?
本田:アトラクション的な、体感型の漫画にしたくて…
平野:体感型!
本田:なので、読む人がなるべく考えなくていいように。
平野:(笑)
本田:考えないで、いつのまにか読み終わってる。《ハカイジュウ》はそんな漫画にしたいと思っているんです。
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次回は漫画家という職業とその歓びについてお聞きします!
お楽しみに。

本田 真吾
漫画家。
2005年月刊少年チャンピオンで「卓球Dash!!」で連載デビュー。
その連載中同時に漫画アクションにて「脳内格闘アキバシュート」も連載。
現在「ハカイジュウ」が月刊少年チャンピオンにて連載中。
また日本文芸社からホラー漫画「切子」が発売中。