PT:もしタナカさんがTシャツをデザインするとしたら、どのようなふうに考えていきます?
タナカ:今回の、TAROのTシャツっていう課題は、ほんとうに難しかったんじゃんないかと思います。まずなにが期待されているのかわからないですよね。着やすさなのか? 売れるものなのか? それとも太郎のエッセンスを凝縮するのか、あるいは太郎の気持ちになってデザインするのか…。

タナカ:太郎はイスをデザインしました。《坐ることを拒否する椅子》です。そういったTAROイズムでつくるとなると、「着られないTシャツなのか?」とかね。たぶん頭の中がグチャグチャになったと思うんですよ。
平野:たしかに、スタート地点でどういう立ち位置に立つか、によって方向性がまったく変わっちゃうものね。
タナカ:サイトを見てもそういうものがたくさんあったと思うんですけど、おそらく最初のスタート地点が混沌としていたために、「どこに着地するつもりだったんだろう?」っていうのがありますよね。
平野:なるほど。そういう意味ではたしかに難しかったでしょうね。
タナカ:それともうひとつあるのは、自分なりにデザインを考えて「よし! 描こう!」って思っても、太郎のインパクトには勝てないでしょ? なかなか。
平野:そうね。
タナカ:ほんとうに今回、応募した方は難しかったと思いますよ。

平野:さっきタナカさんが言ってた「太郎がデザインしたかのようにつくる」っていうことをもしやるとしたら、どうなるんだろう?
タナカ:それは太郎さんのエッセンスに寄りかかるだけだから、創作にならないんですよね(笑)。
平野:そうか(笑)。
タナカ:だからめちゃくちゃ難しいんです。とうぜん審査も難しい。

PT:あいみょんさんはこのコンペに応募しようと思っていたそうですが、構想はあったんですか?
あいみょん:描くだけは描いたんですけど、わたしも完全にリスペクトっていう感じで描いちゃいましたね。
平野:どんなものを考えたの?
あいみょん:太陽の塔と岡本太郎が向き合っていて・・・それとピカソの《花束を持つ手》っていう絵があるんですけど。太郎さんはピカソとおつきあいがあったじゃないですか?
平野:『青春ピカソ』っていう本を書いているくらいだからね。
あいみょん:その花束を太陽の塔が太郎さんに渡しているっていう絵を描きました。
平野:もうちょっと待っていたら、そのデザインが送られてきたかもしれないわけね。
あいみょん:今日、その絵を持ってきたんですけど・・・
平野:見せてよ。

平野:左のこれ、かわいいじゃない。
あいみょん:これはTシャツから這い出して行く感じで・・・
平野:なるほどね。
あいみょん:自分がこういうTシャツを着たいなと思って。

タナカ:それがいつのまにか、一気に審査員になっちゃったわけだ(笑)。
あいみょん:そうなんです…。
タナカ:おもしろいね。
あいみょん:サイトの作品群を見て、「送らなくてよかったな」って思いました。おもしろい人がいっぱいいて、送っていたら恥をかいていたなって。
タナカ:いや、送っておいて、それを言わないで最優秀賞に推すっていう手もあった(笑)。
平野:(爆笑)オレたち、あいみょんさんの本名、知らないもんね。

あいみょん:(笑)でも審査員に選んでいただいて、ほんとうにありがとうございました。光栄です。
平野:そもそもどういう経緯で太郎を知ったの?
あいみょん:2001年くらいに、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』ですね。わたし、クレヨンしんちゃんが大好きで。
平野:太陽の塔が出てくるからね。
あいみょん:小さいときに見て。でもわたしは太陽の塔って現実には存在しないものだと思っていたんです。
平野:アニメの中の創作物だと?
あいみょん:そうです。万博自体、あの映画のシチュエーションだと思っていたくらいですから(笑)。それでもう、とにかく気になって。
タナカ:太陽の塔の造形が気になったんですか?
あいみょん:そうです。大好きで。
平野:でも太陽の塔って、小さい女の子が好きになるような形じゃないよね?
あいみょん:たしかに(笑)。だから、太郎のことを話せる子、周りにぜんぜんいなくて…。
平野:そうでしょ?(笑)
タナカ:太陽の塔と岡本太郎がくっついたのはいつ頃なんですか?
あいみょん:中学校の美術の時間ですね。岡本太郎とピカソって、習うじゃないですか?
平野:太郎のことを、学校で習うの?
あいみょん:わたしは学校で習いました。
教科書に出てきたかは忘れちゃったんですけど、わたし、ピカソのことが好きで、それでいろいろ調べていくうちに・・・
平野:調べるって、パソコンで?
あいみょん:ネットです。
タナカ:我々のように図書館じゃない(笑)。
平野:この子たちの世代はいきなりネットなんだね。

あいみょん:それでピカソに影響を受けている存在ということで、岡本太郎とつながって・・・
タナカ:で、その岡本太郎を調べてみたら、太陽の塔が出てきたと。
あいみょん:そうです!この人か!って・・・でも岡本太郎はわたしが生まれてすぐに亡くなっていたので。
平野:太郎が亡くなったのは96年の1月だけど、あいみょんさんはいくつでした?
あいみょん:わたしは95年生まれなんで、1年後にはもういなくて・・・自分は会えなかったっていう悔しさはありますね。
平野:周りの友達に太郎の話とかはするの?
あいみょん:一方的にします!(笑)わたしはみんなにピカソと岡本太郎について「こういう絵を描くのよ! すごいでしょ?」って言うんですけど、みんなは「誰にでも描けそうだ!」って。
タナカ:(笑)
あいみょん:でもわたしは、「誰でも描けそう」って思える絵を描けることがすごくないですか?っていう感覚で・・・だからもっと岡本太郎や太郎の絵を伝えたいんです。
平野:いまの話を敏子が聞いたら、めちゃくちゃ喜んだろうな。だって物心ついたときに太郎はいませんでしたっていう世代の子が、こうやって太郎が好きだって熱く語ってくれるんだからね。

タナカ:うん。そうですよね。
平野:この状態こそ、敏子が目指していたことなんだ、きっと。
タナカ:飛び上がって、抱きついたかもしれないな。
あいみょん:嬉しいです。会いたかったなってほんとうに思います。
平野:東京にはいつ出てきたの?
あいみょん:半年前です。それまでは兵庫県にいたので。
平野:まだ半年なんだ。

あいみょん:はい。太陽の塔と距離的に離れるのがほんとうに嫌だったんですけど、でもこうやって審査員にもなれて、東京に来てよかったです!
タナカ:ほんとうによかったよね。この場所にも来られて。
あいみょん:ここにこんな場所があるなんて知らなかった。
タナカ:普通は知らないよ。
あいみょん:入れる日が来るなんて思ってなかったのでほんとうに感激にしました。
タナカ:東京に来て数ヶ月でね…。生き急いでるんじゃないの?(笑)

平野:おお、ジャニス・ジョップリンだ!(笑)
あいみょん:かもしれないです(笑)。
タナカ:事故とかには気をつけてくださいよ。
あいみょん:はい! 気をつけてがんばります!