最後は山下裕二さんの特別賞への講評です。
「審査において、
膨大な数のファイルを見ます。
その中から各審査員が目を通して、
合議制で26名の入選を決めます。
展示されたのを見たのは一週間前でした。
展示を見たとき、
迫力あるなと思いました。
そういう意味でも今回は、とてもいい設営ができたと思います。
ただ椹木さんもおっしゃっていたように、
『もうこれしかない!』と突出した作品があったわけではなかった。
入選作のレベルは高かったので甲乙つけがたかった。
だからこそ特別賞も3名ということなんです。

あべゆかさん。
最後の晩餐をイメージさせる作品でした。
これは激しいタッチで描かれていて、
手前のインスタレーションがそれぞれに思いを込めてつくりこんでいる。
ペインティングだけだと賞にはならなかったと思います。
その部分で近づいてみたときの造作がおもしろかった。

井上裕起さん。
オオサンショウウオとF1のイメージ。
彼の作品は前にも拝見したことがあったのですが、
今回はディテールの作り込みが見事だった。
天然記念物とハイテクの象徴のイメージを重ね合わせる発想がおもしろかったです。

黒木重雄さん。
黒木さんの作品も見たことはあったのですが、
今回は入魂の大作ではないかと。
東日本大震災や個人的に経験された悲しいことを作品に昇華させた。
『生命の循環』をテーマにした、
非常に長い時間をかけて思いをこめて作った見事な大作です。
最後に、個人的には今年の中で、
平面でクオリティが高いのが多くて嬉しかった。
太郎賞は平面では受賞できないと言われたりしていますが、
私は平面の素晴らしい作品を待っています。」