「太郎さんは自殺願望もずっとあったようなので。」

「パリに行ったときに、
実存主義が流行していて、
『神はいなくなった』
自分がここにいる。
っていう、すごく切実な哲学なんです。」
「かたや岡本かの子は真逆で。
それがおもしろいと思うんです。
仏教を信仰していたので、
歌人だったので『女人ぼさつ』っていう歌を詠んでまして。」
「花と自分はリンクしているっていう歌で・・・」
「ぼくは仏教は科学だと思っているんですけど、
あなたとか私とか勝った負けたとか、
あの人は金持ちで私は貧乏で・・・
とかそういうのはないと。
粒子レベルで見れば、すべて同じだと。」
「極端な話で言うと、みんな粒々で。
境はないんですね。」
「それをかの子さんは歌っているんです。
これを棟方志功さんが版画にしたくらいの歌なんです。」
「仏教っていうのは人情とかそういう世俗的な、
お涙頂戴的なことじゃなくて。
・・・こういう話してても平気ですか(笑)。」
「過去も未来もないんです。
今しかなくて。
その今ですら特定できない、実体すらないというのが仏教で。
アドラーの教えっていうのも流行りましたけど、
あれも仏教に似ていると思っていて。
『あなたそこにいるんだから、
そこから始めればいいでしょ!』
っていうことで。」
「実存っていうものと、
仏教っていうのが近づいてくるわけで。」
「マインドフルネスっていうのも、
そうですね。ビジネス用語でありますけど。」
「そう考えると、
主体性を確立する、
個を取り戻そうとする太郎と、
なに言ってるのよ、
あなたも私の粒々のひとつなのよ!
っていう、かの子の戦いなんです。」
「つまりかの子の圧勝なんですけどね。」