作家、クリエーターとして、 あらゆるジャンルに渡る幅広い表現活動を行っている いとうせいこうさんとの対談です。
〈前回までは〉
いとうせいこう①「まだここに太郎さんがいるんじゃないかって思っちゃいますね。」
今回は岡本太郎記念館の展示棟をまわっていただきました。
「ぼくは仮面が大好きで、民博に見に行きましたよ。」
平野:では次に、新しい建物のほうをご案内しますね。ここは太郎の没後、記念館が出来るときに新設された展示棟です。
いとう:企画展をやるところですね。
平野:そうです。3月から太陽の塔の内部公開がはじまるので、いまは太陽の塔と大阪万博テーマ館に関する展示をやっています。

平野:この部屋では、主にテーマ館の地下と太陽の塔内部の展示空間を紹介しています。さまざまな模型類がありますが、ほぼすべて海洋堂につくってもらいました。これが当時の地下展示です。
いとう:そうだ。太陽の塔に入る前にこういう展示がありましたね。
平野:大きく3つのゾーンがあったんですが、それをミニチュアの3次元空間として再現しました。なにしろ残っているのはわずかな写真だけなので、立体化するのはとても難しい仕事でした。さすが海洋堂です。
いとう:いや、これはすごい。
平野:ここは〈いのち〉名づけられたゾーンです。タンパク質やDNAなど、いのちをつくる物質が5億倍に引き伸ばされ、観客を包む、というもの。中央の半球には、多様な生きものの誕生シーンが映し出されています。

平野:隣は〈ひと〉。表現されているのは狩猟時代の人間の暮らしです。自然を怖れ、自然を敬い、自然と闘って生きた時代ですね。

平野:これが〈いのり〉。世界から集めた仮面と神像が宙に浮く、という呪術的な空間です。仮面や神像は、万博閉幕後にほぼすべて民博(国立民族学博物館)にいきました。

いとう:民博の仮面が充実してるのは、そうか、そういうことだったんだ。
平野:太郎が世界から集めた民族資料が呼び水になって、万博の閉幕から7年後に民博がつくられたんです。
いとう:ぼくは仮面が大好きで、民博に見に行きましたよ。
平野:真ん中にある巨大な黄金の仮面が太郎のつくった《地底の太陽》です。こちらは閉幕後に行方不明になってしまったので、太陽の塔の内部公開にあわせて復元しました。3月から見られますよ。
いとう:ああ、それは楽しみだな。
平野:これが1970年当時の太陽の塔の内部です。

いとう:すごい!
平野:いまの若い人たちは太陽の塔の中に内容物があるってことを知らないんですよね。
いとう:そうでしょうね。空洞だと思っているんだろうなあ。
平野:そしてこれが《生命の樹》。

いとう:ポップだなあ!
平野:単細胞生物から人類まで、生物進化のプロセスを1本の樹に造形化しているんだけど、「人間がいちばん偉い」って言ってるわけじゃない。
いとう:うん、うん。
平野:太郎がいちばんリスペクトしていたのはアメーバですからね。「オレは単細胞になりたいんだ!」って言ってたくらいですから。
いとう:あれ? そういわれてみると、アメーバ、やたらでかいなあ(笑)。
平野:いちばん上の人間なんて、50センチくらいですよ。
いとう:(笑)
平野:しかもクロマニヨン人までですからね。服を着ている現代人なんか、出てこない。われわれなんて、ここに登場する資格もないと思っていたんでしょう。
いとう:ああ、なるほど。よくわかる。まあ、それにしてもアメーバ、でかすぎるよね(笑)。
平野:(笑)

平野:ここにあるのが、太陽の塔を発想していくプロセスで起こしたスケッチです。
いとう:これはすごいな。
平野:いちばん最初のスケッチには大屋根、大階段、そして樹々だけが描かれています。
いとう:あ、ほんとだ。塔はないですね。
平野:次のスケッチがこれ。タケノコみたいな塔の内部を螺旋状にあがって大屋根に出て行く、っていうアイデアを描いています。
いとう:形より先に機能を考えていたんですね。
平野:このト−テムポールみたいなのはモントリオールで描いたものなんですが、枝がいっぱいでてるから、まだ「樹」なんですよね。
いとう:ほんとうだ。
平野:太郎は当初、太陽の塔を「生命の樹」と呼んでいました。
いとう:そうか。中身から考えたらそうですよね。
平野:最初、太陽の塔なんていう名前はなかった。それがだんだん形が変わってきて・・・
いとう:ついに太陽がでてきた。
平野:太陽の塔は中南米を旅行していた2ヶ月のあいだに考えられたものです。最初に訪れたモントリオールからだんだん形が変わり、日本に帰ってくる頃にはできあがっていた。
いとう:なるほど。日本で考えていたらまた違うものができたかもしれないですね。興味深いな。
平野:ではこちらへどうぞ。ここは下のアトリエからあがってこられる場所なんですけど。
いとう:本棚、拝見してもいいですか?

いとう:文学、多いですね。
平野:さあ、では対談をはじめましょうか。
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次回はいよいよ対談スタート。
いとうさんと岡本太郎の接点とは?
いとうせいこう③「いちばん最初にやったのは・・・たぶんぼくでしょう。」

いとうせいこう
作家・クリエイター
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエイターとして、活字・映像・音楽・舞台など、多方面で活躍。
著書に『ノーライフキング』『見仏記』(みうらじゅんと共著)『ボタニカル・ライフ』(第15回講談社エッセイ賞受賞)など。
『想像ラジオ』『鼻に挟み撃ち』で芥川賞候補に(前者は第35回野間文芸新人賞受賞)。テレビでは「白昼夢」(フジテレビ)「オトナに!」(TOKYO MX)などにレギュラー出演中。
浅草、上野を拠点に「したまちコメディ映画祭in台東」では総合プロデューサーを務めている。