新進気鋭の映像クリエイターとして、多数のミュージックビオの、CM映像のディレクションを行っている映像作家、杉本晃佑さんとの対談です。
〈前回までは〉
①「音と映像が合った瞬間とか、生理的にゾクっと…」
②「漫画って、読むのは楽しいけど、描くのはそう楽しくなかったんで……」
③「音と映像が絡む瞬間」。
④「ヤン・シュヴァンクマイエルなどの伝統的なチェコアニメを学びに行ったわけではないんですけど。」
⑤「毎回仕事のたびに新しいタッチに挑戦したいと思っているんですね。」
⑥「憧れの時代を疑似旅行してみたっていうイメージがいちばん近いかな。」
⑦「直球もあれば、ぼく以外にはわからないだろうなっていうフィルターもあって。」
⑧「最初に『どこまで冒険するか』っていう話はするんですけどね。」
⑨「ひとり一人が自分の眼で見ている現実のほうがカッコいいと思っているんです。」
⑩「自分の好きな感覚に従って濃いもの、密度の高いものをつくろうと……」
最終回は「アウトサイダー」。
「ぼくにはアウトサイダーだってことがずっとつきまとっているんですよね。」
平野:作品が出来上がったとき、最後にだれかに見せたりします? これでいいかを判断するために。
杉本:ないですね。
平野:すべて自分で決める? だれかに判断を仰いだり、なにかを基準に判断したりすることはない?
杉本:そうですね。そういう相手がいたらありがたいとは思うけど。強いて言えば、クライアントの反応くらいかな。
Doritos Collide TVCM (Australia) from Kosuke Sugimoto on Vimeo.
平野:先ほどそういう意味でベンチマークの話をしたんですけど、やっぱりそんな都合のいいものはないですよね(笑)。
杉本:自分で決めないといけないですよね。
平野:創造的な仕事をしている人って、いつの間にか世の中の感覚からズレちゃうかもしれないでしょ? 本人が気がつかないうちに。
杉本:はい。
平野:本人に自覚がないまま、「なにあれ?」って言われる日が来るかもしれない。最高の作品が出来たと自信をもって送り出したものが、「アレはないね」ってみんなにそっぽを向かれたら、もはやいかんともしがたく、打つ手がない。
杉本:そうですね。

平野:ぼくは、自分がそうなったらどうするか、ってことだけは決めてるんです。
杉本:どうするんですか?
平野:そうなったらスパッと仕事をやめます。杉本さんならどうします?
杉本:ぼくは依頼してくれるクライアントを信じていますから。その人の選球眼を。
平野:なるほど。
杉本:ぼく自身がどうこうというより、その人がぼくのことを OK と言ってくれるなら、ぼくが最大限にやればきっと OK のはずだと。
平野:ああ、そうか。いい話だな。ご自身のアイデンティティや個性みたいなことについてはどう考えてます?
杉本:うーん、むずかしいなあ。
平野: PLAY TAROを見てくれている若い人たちは、きっとまわりの大人たちに「個性的であれ!」と言われているはずなんです。
杉本:「自分の個性を身につけよ!」って。
平野:そうそう。でも、そんなこと言われたって、どうすればいいんだよ!って話じゃないですか。
杉本:そうですよね。
平野:個性って、「明日の朝5時までにつくるぞ!」と決意してできるものじゃないしね。
杉本:(笑)
平野:そういうことも含めて、杉本さんはどう考えてます?

杉本:さっきも言ったように、ぼくにはアウトサイダーだってことがずっとつきまとっているんですよね。映像業界で仕事をしてますけど、自分を映像業界人だと思ったことはないし。
平野:はい。
杉本:映像の時流もよくわかってないし、知るつもりも乗るつもりもないんです。
平野:わかります。
杉本:稀にですけど、そんなぼくに「映像をやりたい」と学生からメールをもらうことがあるんです。「どうやったらそういう仕事にたどり着けますか」って。
平野:なんて答えるんです?
杉本:「他の人に聞いてください」って言います。
平野:(笑)
杉本:ぼくはそれをだれにも聞かなかった人間なんで、聞いた時点でぼくみたいにはならないと思うから。
平野:生涯弟子をとらなかった岡本太郎は、「弟子になりたいなんてヤツは芸術家失格だ」とよく言っていたらしい。芸術は人に教わるものじゃないし、だれかに教えてもらってなんとかしようと考えた時点でアウトだってことでしょう。言っていることがちょっと似てるなあ。
杉本:あの、ぼくはアウトとは言ってないです(笑)。ぼくの歩んだ道じゃないっていうだけで。
平野:アウトサイダーっていうのはつまり、映像業界のメインストリームを歩いてきたわけじゃないし、これからメインストリームの仲間に入れてくださいって言う気もないってことですよね。
杉本:メインに行くにはもう遅すぎると思うんで(笑)。

平野:映像の世界ってそれこそ技術の進歩が早いから、次々に新しいものが出てくるでしょう?
杉本:はい。
平野:世間の好みもどんどん変わる。そういうなかで、これから先、こんな戦略でやっていこう、あるいはこれだけは大事に守ろう、みたいなことってなにかあります?
杉本:毎回、ちゃんと〝間違った映像〟をつくっているかどうかっていうことかな。
平野:間違った映像?
杉本:真っ当な映像をつくる人間じゃないんだから、オマエは。これは真っ当になり過ぎてないか? と。
平野:ああ、なるほど。人とおなじことをやっていたら〝アウトサイダー〟の面目が立たないもんね(笑)。
杉本:ある程度は真っ当にしなければいけないけれど、正直になり過ぎていないかと。どこかこの部分はヘンテコですねって言われるようになっていないと……って、そこは毎回思いますね。
平野:最後の最後に、「クリエイティブの世界で生きたいと願う若い世代になにか一言」って言おうと思ってたんだけど、もうわかったからいいです(笑)。
杉本:え?(笑)
平野:「自分で考えろ」ってことですよね?
杉本:……そうですね。あの、はい。そうです。
平野:(笑)
杉本:自分でそれを考えるのが好きじゃない人は、いずれしんどい目に遭うんじゃないかと思うんで。
平野:ほんとうにそうですよね。いや、今日はメチャクチャおもしろかった。ありがとうございました。
杉本:ぼくもすごく楽しかったです。久々に自分のことをしゃべって、改めて気づいたことがいろいろありました。ありがとうございました!
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杉本晃佑(すぎもと こうすけ)
映像作家
1983年生まれ。アニメーション・実写・3DCG・モーショングラフィックスなどを用いた映像と音楽とを緻密に融合させた構成、歌詞や広告商品などを独自に掘り下げたストーリー構築を得意とし、MV、CM制作を主として活動。近年はSEKAI NO OWARIやSCANDALのMV、NHKみんなのうたなどを手がける。また「the TV show」「これくらいで歌う」などの個人作品は国内外の多数の映画祭・コンぺティションで受賞。
2014年からプラハを拠点にヨーロッパでの活動も開始。映像監督を務めた3D映像コンサート「Vivaldianno 2015」はイギリス・ドイツ・チェコなど15ヶ国以上で上演、クラシックコンサートとしては異例の20万人以上の動員となる。2018年、東京に株式会社Studio12を設立。