他に類を見ない、オリジナリティあふれるコントを生み出す、お笑いコンビ・野性爆弾のくっきーさんとの対談です。
第三回目は「行き当たりばったり系」
〈前回までは〉
①「最初はお笑い芸人の一部としてやっていた感じなんですわ。」
②「やりたいことをやって生きてきただけで……すんません!」
「下描きはしますけど。でもそれもマジックとかで描きます。」
くっきー :夢の世界といえば、ネタもそんな感じなんです。急に鍾乳洞にバーっと飛んでいったりとか、そういうネタが多いんで。わけのわからないものが出てくるとか、非現実的なものがめちゃくちゃ多いですね。
平野:でもそれって計算してないのかな? ここらで鍾乳洞に飛ぶとおもしろそうだって。構成を緻密に考えたうえで、そろそろ一気にヘンなところに飛んだほうがいいなって、ロジカルに考えてない? もしかしたら、無意識のうちにやっていることかもしれないけど。
くっきー :おお〜! そうなんかな?
平野:もっとも、千歳空港にしようか、鍾乳洞にするか、アフリカのサバンナがいいか、って考えているわけじゃなさそうだけどね。
くっきー :どっちかといえば、ボワンとしたイメージですかね。まず世界観というか、設定を考えたくなっちゃうんです。
平野:設定?
くっきー :色っていうか……鍾乳洞のドロっとした感じ、あるじゃないですか。ちょっと黄色に茶が混ざった感じというか。
平野:はいはい。
くっきー :そういうところから……そんな雰囲気でネタをやりたいな、みたいなイメージからはじまるんです。
平野:てことは、真っ先に映像的なイメージが湧いてくるってことだ。
くっきー :ああ、そうです。完全にそうですね。映像みたいな感じです。
平野:じゃあやっぱり、ネタも作品も、いちばん根っこのところは一緒なのかもしれないね。
くっきー :とくにネタは、ほんまにそうですね。
平野:その映像的なイメージって、もちろんカチッと仕上がった状態じゃないでしょう?
くっきー :そうですね。
平野:エスキースはたくさん描きます?
くっきー :なんですか、エスキースって?

平野:「習作」って呼ばれるものだけど、要するに練習です。何回も何回も紙に描いて、精度を上げていく。
くっきー :あ、それはしないです。
平野:いきなり本番の紙にグリグリ描きはじめる?
くっきー :下描きはしますけど。でもそれもマジックとかで描きます。
平野:なるほど。描いているうちにだんだんイメージが固まっていく感じ?
くっきー :そうですね。これも描いたときは横縞のリボンにしようなんて思ってなくて。

平野:つくり方が構築的なのかな。階段をのぼっていくように、徐々に全体像ができあがっていく感じなんでしょう?
くっきー :構築的です(笑)。
平野:うん。そこは太郎と逆だね。
くっきー :あっ、そうなんや。
平野:岡本敏子がよく言ってたけど、「こういうものを描きたい」というイメージが立ちのぼったとき、太郎の頭のなかには、ほぼ完成形ができあがっていたらしい。
くっきー :ひぇー!
平野:でも、だからといって、いきなりキャンバスにグリグリ描きはじめるわけじゃない。要らない紙に、おなじディテールを何回も何回も繰り返し描くんです。
くっきー :なぜです?
平野:おそらく脳みそに浮かんでいるイメージを自分の手が再現できるまで、つまり“頭に手が追いつく”まで練習していたんでしょう。
くっきー :すごいなあ。

平野:そういうエスキースが記念館にたくさんのこってます。それこそおなじ構図のデッサンが何十枚ってね。ちょっと見ただけではどこがちがうのかわからない。本人にはちがうんだろうけど。
くっきー :そこは完全に真逆ですわ。ぼくは行き当たりばったり系で……どうとでもなるだろうと思っているんで(笑)。
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次回は「くっきーと太郎」

くっきー
1976年3月12日生まれ。滋賀県出身。本名・川島邦裕。
幼稚園からの幼馴染だったロッシー(本名・城野克弥)と94年に「野性爆弾」を結成。NSC大阪校13期生。
若手時代から独特の世界観で注目され、MBSテレビ「オールザッツ漫才」などで注目を集める。
2008年に拠点を大阪から東京に移し、白塗りした顔で表現するモノマネ芸などが浸透し、2018年上半期ブレイク芸人NO.1となる。

クリエイティブ・ディレクションに「風とロック」の箭内道彦、
絵画や映像、